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大友啓史監督が待ち望んでいたことが『宝島』にあった
大友啓史監督は、2001年度前期に放送されたNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』の演出を担当しており、その時代設定は1972年の沖縄返還後だった。当時は「敢えて歴史的要素に踏み込むことを抑えた物語」であったことを振り返りつつ、大友監督は今回の『宝島』に向けて以下のような言葉を伝えている。
その(『ちゅらさん』の)撮影中から、自分のなかでは、返還前の沖縄を描かないと本当の意味で物語は完結しないのではないか、沖縄の人々の本当の気持ちは理解できないのではないか、いつか返還前の沖縄を描きたいと、そういう思いが強く芽生えていました。20年以上経って、小説『宝島』に出会い、自分が待ち望んでいたのは『まさにこれだ!』と確信しましたね。原作者の真藤順丈さんが『すべての物語は沖縄に通じる』と仰っていましたが、本当にその通りだと思います。沖縄の人々が戦後の日本とアメリカの狭間で、どのくらいの血と汗と涙を流してきたのか、その喜びも悲しみも体感しないとわからない。それを誰もが追体験できるような映画を作りたかったんですね
まさにその通りで、本作は戦後沖縄の「血と汗と涙」や「喜びと悲しみ」を、映画という媒体だからこそ「体感」「追体験」できる作品だ。戦後80年の今、スタッフやキャストたちが全力で向き合い、大友監督の思いが結集したこの『宝島』を、ぜひスクリーンで見届けてほしい。
