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アメリカ統治下の沖縄を描いた大きな意義
かつて沖縄では地上戦が勃発し、県民の4人に1人が命を落とした。その悲劇の後、1950〜70年代にかけてのアメリカ統治下で、悔しさと怒りが募る人々の心理を描いたことも、本作の大きな意義だろう。

小学校の教師となったヤマコが目の当たりにする、ある地獄のような光景と、その後に下される理不尽な判断は、その象徴的な場面と言える。舞台は戦後なのに、まるで「戦争がまだ終わっていない」かのような苦しさを覚える。
そして、戦後沖縄での人々の悔しさや悲しみを描く物語が、今もなおも世界各地で続く戦争、いや虐殺と重なり合い、「地続き」のように思えてくる。それもまた、戦後80年という節目の年にこの作品を観る意義だろう。
ところで、「日本人ファースト」を掲げる政党が話題となった今、実際にあった問題を扱うにせよ、アメリカ兵たちを「敵」として描くことには、ナショナリスティックな欲望を煽動することになってしまわないかという懸念もあるだろう。しかし本作では、善と悪の二元論では割り切れないフラットな視点が保たれている。特に、アメリカ軍諜報部の高官がグスクの協力者となる展開では、それぞれのキャラクターが持つ思想や信念の多様さもうかがえるだろう。