INDEX
ジョイの他者への共感と行動力が「ジェーン」と家庭にもたらしていくもの
ジェーンでの活動にのめり込むようになったジョイは、一際共感力の高い存在として描かれるようになる。ジョイ自身が手術を受けた際、案内人は手術には立ち会わず一人で臨んだが、ジョイは自分が案内した女性と一緒に手術室に入り怖がる女性に声をかけ、その手を握る。また、手術代が払えない女性にも中絶の機会を与えるべきだと進言し、自らが手術のやり方を体得することで、高額な手術費を請求していたディーン(コリー・マイケル・スミス)を頼らずに手術の機会を与えることを可能にした。

しかし、娘にも夫にもジェーンの活動が知られたことで、ジョイは団体と縁を切ろうとするが、ジェーンに電話してきた女性たちの音声テープを聞き、娘に戻るべきだと言われることで支援を続けることを決める。さらに終盤、弁護士であるジョイの夫がジェーンの中枢メンバーたちを弁護したことがバージニアの口から語られ、ジョイの使命感や熱意が娘と夫の考えをも変えたことがわかる。
何不自由ない主婦だったジョイは他者への共感と問題意識に基づいて意志を持って行動し、ジェーンにも家庭にも変革をもたらしてゆく。そして、ジョイがジェーンに影響を与えたのは、リーダーであるバージニアが絶対君主的に君臨しているのではなく、皆が横並びで発言権を持っているからでもあるだろう。団体唯一の黒人女性であるグウェン(ウンミ・モサク)が、ジェーンにおいていかに白人女性が優遇されているかを痛烈に批判した時もそうであったが、意見を聞き、運営の改善がなされるという意味での対話が機能している点は見逃してはならない。
