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映画『コール・ジェーン』人工妊娠中絶を求める女性たちから学ぶ団結のあり方

2024.3.28

#MOVIE

©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.
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12,000人もの女性を救った団体「ジェーン」の物語

『コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ー』は、1960年代後半から70年代初頭にアメリカに実在した団体をモチーフにした映画だ。この団体は人工妊娠中絶が違法であった当時、推定12,000人もの女性を救ったのだという。作中では、裕福な家庭の主婦ながら中絶の困難に直面したジョイ(エリザベス・バンクス)が中絶手術を提供する「ジェーン」という団体と出会い、自らもこの団体に参加していく様子を映し出すが、監督であるフィリス・ナジーはオフィシャルインタビューにおいて、本作の物語の本質は「女性たちに立ちはだかる大きな難問に対して、団結して解決策を見い出していく」ことであると語った。

ジョイ(エリザベス・バンクス) / ©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.
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『キャロル』の脚本を担当したフィリス、そして『バービー』のプロデューサーに名を連ねたロビー・ブレナーがプロデュースを手がける本作において、「ジェーン」に集う女性たちの連帯は、彼女たちが携わってきた作品において描かれてきた連帯と肩を並べるほど豊かに描かれた。それは、異なるアイデンティティを持つ他者と一枚岩になって手を取り合おうとするとき、今を生きる私たちにもきっと響いてくるものだ。

多様なアイデンティティを持つ女性たちが、心を許しあい機能している「ジェーン」という団体について

ジェーンを構成するメンバーは実に多様で、団体のリーダーでありフェミニストであるバージニア(シガニー・ウィーバー)をはじめ、様々な年齢の女性たちが集う。さらに、カトリック教徒のシスターや作品の中で妊娠・出産をしたであろうと推測できる女性も登場し、誰がどの女性の中絶の案内を担当するかを決める会議においては、似たような境遇にあるメンバーが選定される。

バージニア(シガニー・ウィーバー) / ©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.

さらに重要なのは、メンバー同士の関わりが非常に和やかであるということである。例えばジョイが初めてジェーンの会議に訪れるシーンにおいては、ジョイが部屋に足を踏み入れると、談笑している人だけでなくダンスをしている人、ギターを弾いている人などが映し出される。彼女たちは同じ志を持った仲間であると同時に、気心の知れた友人でもあるのだ。

ジェーンの女性たちが登場するシーンでは、カメラは手持ちカメラで撮っているようにユラユラと動き、思い思いに声を発するメンバーたちの顔を追うように引きの位置で動く。だからこそ、話をしている当人だけでなくその話に耳を傾けて思わず笑ってしまう背後の人の表情もフレームに映り込み、彼らがただ理念の下に集い機械的に連携しているわけではなく、心を許しあっていて信頼関係が醸成されているのが伝わってくる。さらに、ジェーンの女性たちの表情や動きを仔細に映そうとするカメラの動きは、彼女たち皆が運動の主体であり、一人一人に活動を推し進める力があることをも示唆するだろう。

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