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「やるのは日本人の僕らですから。勘違いしたものができても、それはそれでオルタナティブだなと思うんです」(田中)
ー実際に出来上がったアルバムを聴くと、もちろん曲ごとにいろんなカラーがありつつ、GRAPEVINEの持つオルタナ性みたいなものがより強く出ているように感じました。まず先行で配信された“雀の子”が非常にインパクトがあって……。
田中:まさか“雀の子”が先行シングルになるとは僕も思ってなかったので、なかなかビクター攻めてるなぁと思いましたね(笑)。
ー実際にどんなイメージやリファレンスを共有しながら制作を進めたのでしょうか?
田中:“雀の子”に関しては、デモを作った時点から変なもんにしようとは思ってたんです。と言いますのも、去年は店じまいが早くて、年末年始に僕が体調壊している間に亀井くんがたくさん曲を作ってくれたんですね。その中にいわゆる美メロの曲が2〜3曲あったので、こういう曲たちがあれば、あとは何をしてもいいし、かなり攻撃的な曲を書いてもいいなって考えたんですよ。“雀の子”のイメージは……ブラックミュージックはもともと好きなんですけど、その中でもいわゆる「ブラックロック」と呼ばれているようなアーティストのイメージですね。

ー田中さんはYves Tumorがお好きだそうですね。
田中:Yves Tumorは、昔の音楽を知ってる人間からするとちょっと気恥ずかしいところもあるんですよ。素直にかっこいいだけじゃなくて、ある意味ダサいところも含めて、今聴くとかっこいいと言いますか。Living Colourとかキザイア・ジョーンズとか、当時一瞬盛り上がったブラックロックみたいな感じもするんですよね。プリンスはみんな好きやから根本にあるとして、それ以降の音楽も参照したりして。西川さんもLiving Colour聴いて、「いやいや、こんなエフェクター持ってないよ」みたいな(笑)。
ー今回シンセの要素も大きいですけど、全体的にギターは結構歪んでますよね。
田中:そうですね。こんなに歪ませたのは久しぶりなんじゃないですかね。
高野:“雀の子”のそういう意図はデモテープを聴いて何となくわかったから、歪んでいるところとそうじゃないところの対比は結構意識していて。あと他の曲でもそうですけど、リズムボックスが入ってたりとか、昨今のブラックものの要素はもうみんな聴き飽きてるだろうから、そこにもうひとつ何かを加えるというか、ライブでも亀ちゃんが叩いてて絵になるような、そういうイメージは持ってました。

ー確かに“雀の子”もそうだし、“停電の夜”とかもリズムボックスが入ってて、それだけだとちょっと前までのトラップみたいになっちゃうかもしれないけど、そこにバンドの肉体性が混ざることによって、聴いたことのないものになっていると感じました。
田中:そのあたりはすごく手応えを感じてて、どこにもない感じになってるんじゃないかな。まあ、あくまでも曲のアレンジとしてのアイデアでしかないですし、やるのは日本人の僕らですから。「こういう感じでやってみよう」と言って勘違いしたものができても、それはそれでそれこそオルタナティブだなと思うんです。そこで盛り上がれたら、楽しいレコーディングになるなっていう感じでしたね。
