グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
7月20日は小説家の額賀澪さんの紹介で、ミステリー作家の佐藤青南さんが登場。ミュージシャンを目指して上京するも挫折し、「読んだことがなかった」という小説を書き始めたきっかけについて、そして最新作『残奏』についてお聞きしました。
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27歳までしか生きられないだろう
タカノ(MC):額賀さんが佐藤さんを「出版業界の世話焼きお兄さん」と紹介しておりまして。ご自身もTwitterで「ちょっと自覚あるかも」と呟かれてましたけど。
佐藤:そうですね。首を突っ込まないでいいところに突っ込んじゃうみたいなところはありますね。
タカノ:出版業界に入ったらお世話になりたいですね。
Celeina(MC):佐藤さんは小説家になられる前にミュージシャンとして活動されていたと。
タカノ:すごいプロフィールですよね。
佐藤:でも、まともに食えてなかったので、ずっとバイトをしてたんですよ。地元が長崎なんですけど、音楽の専門学校に入るために東京に出てきて、渋谷にあるMI JAPANのギター科に入って、卒業後はバンド活動をしてみたいな形でやってましたね。
タカノ:当時はどういう音楽をやられてたんですか?
佐藤:本当はラウドミュージックみたいな音楽が大好きだったんですけど、売れたかったのでミスチルとかスピッツみたいなJ-POPの流れを汲むような音楽をやってました(笑)。
タカノ:いいですね、露骨な感じ(笑)。
Celeina:ビジネスマンですね。
タカノ:音楽家を目指していて、今は作家ですから。
Celeina:どうして小説を書こうと思ったんですか?
佐藤:僕は、上京する前は27歳ぐらいまでしか生きられないと思っていて。
タカノ:それはもしかしてカート・コバーンとか。
佐藤:そうですね(笑)。ジム・モリソンとかジミ・ヘンドリックスが27歳で亡くなっているから、僕も音楽で成功して27歳ぐらいまでしか生きられないだろうな、みたいなことを思っていたわけですよ。
けれども実際東京に来てみたら思ったほど成功もしないし、どうやら人生は続いていくらしいみたいな感じになってきちゃって。先のことを全く考えてなかったので、まずいんじゃないかみたいな感じになってきて。バンド活動もうまくいかなくなって。暇になっちゃったからブックオフで小説を買って読むようになって。それまでは小説を読んだこともなかったんですけれど。
タカノ:そこからだったんですか。
佐藤:そうですね。読んでみたら面白いなと思って。
Celeina:エンタメの一つとして取り入れて読んでみたらハマっちゃって。
佐藤:はい。現実逃避みたいな感じですかね。もう何もかもうまくいかなくてお金もないから、ブックオフで100円の小説を買って読むみたいな感じでしたね。
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賞金欲しさに作家の道へ
タカノ:でも、音楽家も小説家もどっちも狭き門じゃないですか。今は小説家として活躍されてますから、すごいですよね。元々ミステリー作品を書こうとして始めたんですか?
佐藤:最初はそういうジャンル分けすら全く知らなかったので。本格的にプロを目指そうと思ったのは、ミステリーの新人賞の賞金がズバ抜けて高いと知ってからなんですね。
Celeina:やっぱりビジネスマンですね(笑)。
佐藤:純文学の賞は、すごく有名な賞を受賞しても100万円ぐらいなんですよ。でもミステリーの新人賞は、僕がデビューした『このミステリーがすごい!』大賞だと1,200万円で、あとは『江戸川乱歩賞』が1,000万円(2022年から500万円)みたいな感じで。
タカノ:『このミステリーがすごい!』大賞って、そんなにもらえるんですか?
佐藤:そうなんですよ。だから締切を破ってしまいそうなときは「1,200万、1,200万……」って、ずっと頭の中で唱えながら書いてましたね(笑)。
タカノ:そして(2009年に)第9回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を受賞されて。
佐藤:優秀賞だったから結局1,200万はもらえなかったんですよ。
タカノ:でも、すごく輝かしい実績ですよ。
Celeina:小説を書き始めてから小説家としてデビューされるまでの道のりは、どれぐらいかかったんですか?
佐藤:個人的にはしんどかったですけれども、5年ぐらいなので順調な方じゃないかなとは思います。
タカノ:『ハンチバック』の市川沙央さんも20年書いてデビューという話でしたからね。でも5年も結構しんどいですよね。
Celeina:そのときのモチベーションはどうやってキープしていたんですか? 先ほどもお金の話はしてましたけど。
佐藤:お金ですよ(笑)。でも、それまで音楽をやってて、音楽が駄目そうだから小説家を目指すって、その話だけ聞いたらめちゃくちゃ駄目人間じゃないですか。
タカノ:駄目人間というか、どっちも難しいイメージはありますね。
佐藤:30歳に近くなってて、音楽で挫折していたから、次は何としても結果を出したいっていうのはモチベーションになりましたね。
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YouTubeは種をまく感覚
タカノ:実は僕も趣味で小説を書いてて、プチ作家志望みたいな感じなんですけれども。佐藤さんが『小説家佐藤青南のとはずがたり』というYouTubeをやられてて。僕、チャンネル登録してまして。
佐藤:ビックリしましたね(笑)。
タカノ:小説の書き方とか新人賞応募のやり方を発信されてて、参考にさせていただいてたんです。だからゲストで来られるって聞いて驚いて。
佐藤:じゃあ僕が師匠じゃないですか(笑)。
タカノ:そうなんですよ(笑)。YouTubeを始めようと思ったきっかけは何だったんですか?
佐藤:最初にYouTubeチャンネルを作ったきっかけは、自分の小説のPVを自分で作っていたからなんですよ。役者さんを集めて、レンタルスタジオを借りて、映像を撮って、音楽つけてみたいな。
タカノ:今までの経験が活きてそうですね。
Celeina:ミュージックビデオみたいな感覚ですよね。
佐藤:そうですね。友達のミュージシャンを集めてレコーディングしたりとか。それをアップするためにチャンネルを立ち上げて、いくつか動画を投稿していたんですけど、そんなに話題にならなくて。しばらく放置していたんだけども、みんなYouTubeを始める流れになってきたじゃないですか。
Celeina:おうち時間が増えましたからね。
佐藤:そうですね。なので種をまくみたいな感覚で。バズって大金持ちになってやろうみたいなのはないですが、小説のプロモーションの可能性を探るみたいな感覚ですね。
タカノ:私もいろいろ勉強させてもらったり、勇気づけられたりしてますから。すごく社会的意義のあるチャンネルだと思ってます。
Celeina:小説家志望じゃなくても普通に楽しめちゃうような、小説家は普段何を食べているのかっていう質問に答えられたりとか。
タカノ:なかなかわからないですよね。ミステリー作家さんが何を食べてるかとか。
佐藤:食べ物は普通ですよ(笑)。
タカノ:僕が好きだった動画は1時間無言で執筆してる様子を配信するっていう動画。1時間夫婦で見ましたから。
Celeina:タカノさんも一緒に執筆したんですか?
タカノ:僕も書いてみたんですけど全然進まなくて。でも、佐藤さんが原稿用紙40枚分をガーッて書くんですよ。それを励みにしながら。
佐藤:一緒に動画を流しながら書いている方は結構いらっしゃいますね。他の人が作業してるっていうのが励みになるみたいで。
タカノ:皆さんもぜひチャンネル登録を。質問の回答がすごく面白いのでチェックしてみてください。
Celeina:それではここで、佐藤さんにこの時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでもらったんですけれども、どんな曲でしょうか?
佐藤:The Strutsの“Could Have Been Me”という曲です。
Celeina:選曲理由は?
佐藤:僕は毎年『SUMMER SONIC』に行ってて、そこで出会ったんですよ。このバンドが毎回ライブの最後にやるアンセムで、ハンドクラップが入っているんですけど、オープンエアーでやるとみんなで手を振って。僕はこの曲を聴くと夏の青空が思い浮かぶので、ちょうどいいかなと思って選びました。
Celeina:いいですね。それでは聴いてみましょう!