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宮﨑駿が「13個の穢れていない石」に託した思い。『君たちはどう生きるか』解説

2023.8.14

#MOVIE

©2023 Studio Ghibli
©2023 Studio Ghibli

宮﨑駿過去作のオマージュ

上記の作品に影響を受けた少年の成長物語である一方で、本作には、もう一つ大きな特徴がある。登場人物に宮﨑駿自身を投影させ、さらには過去作のオマージュを散りばめており、自伝的な意味合いが強い点だ。

眞人と大叔父は宮﨑駿自身の投影だと解釈できる。父親が航空機製作所を経営しているなど、眞人と宮﨑駿の境遇は似ている点が多い。母の喪失と眞人が抱えるマザーコンプレックスは、宮﨑の幼少期から母が病気で寝たきりだったことが反映されているのだろう。

また、劇中では、宮﨑駿監督の過去作のオマージュと思われる描写が散見される。最初に眞人が小枝をくぐって塔に潜り込むシーンは、『となりのトトロ』(1988年)の森に入る場面を思い起こさせる。大叔父が創る異世界では、『もののけ姫』(1997年)のコダマを彷彿とさせるわらわらや、『風の谷のナウシカ』(1984年)の王蟲を小さくしたような赤い目の虫も映り込む。大勢のインコたちが剣を掲げるところは、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)を想起させた。

大叔父は眞人に「13個の穢れていない石がある。3日に1つずつ積み上げて世界の均衡を維持する自分の役目を引き継いで欲しい」と頼む。この13個の石は、短編『On Your Mark』(1995年)も含め、宮﨑駿がこれまでに監督した13の作品を示唆していると思われる。

第二次大戦といった時代背景や家族については『風立ちぬ』との共通点も見出せるが、過去作のオマージュを含めてよりダイレクトに自らを反映させたのが、本作と言えるだろう。

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