グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
6月22日は、テルミン奏者の街角マチコさんの紹介で、西麻布「Miaki Gallery」のオーナー、ケビン・ヤンさんが出演。写真家を諦めた理由から大学院受験のきっかけなど、人生の分岐点について伺いました。
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日本のアニメカルチャーに惹かれて来日
Celeina(MC):ケビンさんは2003年に来日されて、もう20年くらいになるんですよね?
ケビン:そうですね。気づいたらそのくらい経ちました。
Celeina:元々日本のカルチャーに興味を持たれていたんですか?
ケビン:そうですね。1990年代って日本からの情報はそんなになかったんですけど、そんな中で日本のアニメ、例えば『超時空要塞マクロス』にどハマリしたり。
タカノ(MC):アニメカルチャーね。
ケビン:そうですね。
Celeina:まず最初にご出身をお聞きするべきでしたね。
ケビン:中国の天津です。天津飯というものは日本人が作ったものです(笑)。
タカノ:知らなかった!
ケビン:この20年間これ1本でやってきました(笑)。
タカノ:持ちネタとして(笑)。
Celeina:その後IBMやGREEにもお勤めなられたということで。
ケビン:そうですね。ちょうど22年ぶりに六本木ヒルズに戻ってきた感じですね。
Celeina:その後独立されたんですよね。そのきっかけは?
ケビン:きっかけは家族の看病ですね。皆さん一人っ子政策をご存知だと思うんですけど、その一人っ子政策が始まった年に生まれたんですよね。
Celeina:なるほど、ご家族の看病をするためにフレキシブルなお仕事にされたんですね。
アートへの心残りから写真家へ
Celeina:独立されて、そこからお写真を始められたんですよね。そのきっかけは?
ケビン:子供のときは絵を描いたりアートが好きだったんですけど、中国は受験戦争が凄かったのでそういうのは許されなくて。だから心残りがあったんですよ。大人になって、アートを始めようと思ったらやっぱりハードルあるじゃないですか。それで入りやすいかなと思って写真を始めました。
タカノ:大人になってから夢を実現していくじゃないですけれども、子供の頃っていろんなしがらみがありますもんね。親のことを考えたりとか。
ケビン:そうですね。
Celeina:そして先月西麻布に「Miaki Gallery」をオープンされたんですよね。このギャラリーを始めたきっかけは何ですか?
ケビン:写真家として、ある程度のところまで行って。ソニー賞という賞を取ってロンドンで行われた授賞式に参加したり、要は世界の頂点を見てきたんですよ。それで心が折れて、思い切り逃げました(笑)。
タカノ:十分凄いと思いますけど。
ケビン:30代後半から世界を目指すアーティストになるかっていったら、心細くなって。それで裏方としてアーティストをサポートする側になろうと思って。いろいろ模索してきましたね。
Celeina:なるほど、それでギャラリーを始められたんですね。でも諦めがつくっていうのは結構難しくないですか。気持ちの切り替えは結構さくっといけるタイプですか?
ケビン:そうですね。言って良いのか悪いのかわかんないんですけど、60点70点さえ取れれば次に行くみたいな時が多いですね。
タカノ:でもロンドンで行われた受賞式に参加してるんですよ!?
Celeina:60点70点じゃないよっていうところですけど。
アジアの美しさを世界に広めたい
Celeina:ギャラリーを始められて。このギャラリーのお名前が「ミアキ」っていうんですよね。これはどういう意味ですか?
ケビン:中国の昔の言葉で「一日会わず、三秋のごとき」っていうのがあるんですけど。一日だけ待ってたのにまるで三年経ったような、待ちきれないっていう気持ちを表すもので。三つの秋って書いて三秋で、実る秋っていう意味も込めて「Miaki Gallery」にしました。
タカノ:なるほど、オータムの方の秋だ。
Celeina:「Miaki Gallery」では今どんな展示を行ってらっしゃいますか?
ケビン:24日から新しい展示が始まります。石場文子さんという日本のアーティストの展示で。彼女は版画出身で『愛知トリエンナーレ』にも出ていたアーティストなんですけど。一見生活の中にある普通のものの静止画なんですけど、よく見たらちょっと変な画像になってるんですよね。最近の人は短い動画に慣れていて、観察力が落ちてるのかなと思っていて。これを見て、リフレッシュできるんじゃないかなと思います。
タカノ:ポストカードを持ってきていただいたんですけれども。一瞬ストーブと洗面台が写ってる写真かなと思うんですけど、よく見ると輪郭が縁取られてる。
Celeina:写真に絵を足されてるってことですよね?
ケビン:ではなくて、本当に写真なんです。
Celeina:よくみると秘密が隠されているってそういう意味で!?
タカノ:これは実物を見たい!
ケビン:2019年のパリで彼女の展示を見てゾッコンですね。日本に帰ったらすぐに連絡を取りました。
タカノ:ケビンさん、ギャラリーは今後どのようにしていきたいですか?
ケビン:私と仲良くしてるアーティストが共通して考えてることがありまして、アジアなりの美しさを世界に広めていきたいと思うんですけど。でもその前にはまずアジアを認めないといけないんで。日本のアーティストを中国とか韓国に紹介していきたいという感じです。それが自分の役割かなと思って。
タカノ:世界に発信していくっていうことで。
Celeina:さあここでケビンさんに、この時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでもらったんですよね。どんな曲でしょう?
ケビン:ちょっと渋いかもしれないんですけど、”さくらんぼの実る頃”っていう『紅の豚』の劇中歌ですね。加藤登紀子さんが歌うフランス語のバージョンが好きで。ちょうどこの頃ですね、さくらんぼの実る頃は。
Celeina:確かに! それでは聴いてみましょう。
コロナ禍での迷走から大学院へ
Celeina:ケビンさんは「Miaki Gallery」のオーナーでありながら、今は東京大学大学院の学生もやられているっていう。
タカノ:すごいバイタリティですね。
Celeina:どういうきっかけで入学されたんですか?
ケビン:かなり迷走してた時期があったんですよ。今はその時期から脱出してるところなんですけど。ちょうどコロナ禍で結構迷走してました。とはいえ周りにも言われてるんですけど、止まったら死ぬタイプなんで。
タカノ:マグロだ。
ケビン:動き続けないといけないんで、ちょっと大学に戻って勉強しようかなという感じで。
Celeina:どういったお勉強をされてるんですか?
ケビン:SFプロトタイピングです。今の研究は、今から推算して何をすべきかとか、何かを新しく開発するとかっていう研究なんですけど。SFプロトタイピングは思いっきり50年後を妄想して、それを逆算するっていう思考法を研究してます。
タカノ:SFですよ。具体的にはどんなことが?
ケビン:例えば50年後の広島の平和教育で、パラレルワールドみたいな感じで核爆弾がまた使われたっていうシチュエーションと、核廃絶したシチュエーションと、今みたいなピリピリしてる状態、この三つのそれぞれで妄想してみるみたいな。
Celeina:予想立てて実験してっていう。
ケビン:そうです。逆算して今は何をやった方がいいみたいな。
Celeina:難しそうだけど。
タカノ:楽しそう。
ケビン:企業さんとかも取り込んでるんですよね。
Celeina:最後の質問になるんですけれども、ケビンさんから見て東京の魅力とはズバリ。
ケビン:自由ですね。干渉されない自由、適当な人と人の距離ですね。東京が冷たいとかみんな文句を言うと思うんですけど、でもそれは好きだから文句を言ってると思うんですよね。よく家族に対して文句とか言ってるじゃないですか。それは好きだから。
Celeina:「嫌よ嫌よは好きのうち」っていうことですよね。
タカノ:その冷たいの裏返しじゃないですけれど、いろんな人たちを受け入れてるっていう。いろんな人たちが存在していて、それを悪く言わずに丸ごと東京っていう感じだから。
ケビン:私みたいな人もちゃんと居心地の良いように(笑)。
タカノ:みんな受け入れられてますし。
Celeina:「FIST BUMP」今日は西麻布「Miaki Gallery」のオーナー、ケビン・ヤンさんをお迎えしました。ありがとうございました。
ケビン:ありがとうございました。
GRAND MARQUEE
J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann