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グソクムズの音楽は、はっぴいえんどのない世界でなぜ鳴り響くのか?

2023.7.18

#MUSIC

はっぴいえんどのない世界にグソクムズが鳴り響く

グソクムズの音楽が鳴り響く現代は、はっぴいえんどが鳴り響いていた半世紀前とは全く異なる。それゆえにグソクムズの主観的な表現方法は、はっぴいえんどの客観的な表現方法とは異なっている。

日本語でロックを歌う事は当たり前になったし、「J-POP」は当初掲げられていた「海外に対抗しうる日本の音楽」ではなく、「日本で作られた音楽」を包摂するものとなり、海外への意識は薄弱化している。

皆が同じ方向を向き、同じような状況に置かれる。そのような共通性も、もはやない。音楽のあり方も変容し、家族全員が腰を据え、スピーカーから流れるレコードの音に耳を傾けた時代から、それぞれがイヤホンで、思い思いに楽しむ時代になった。音楽は、「私たち」のものである以上に「わたし」のものになったのだ。

さらに時代は明るいものではない。未曾有の厄災、戦争、SNS上でのバッシング、不景気。私たちが生きる現代には、吹き抜けるような風は通っていない。個人が重視され、共同体も崩壊した。全員が求めるユートピアは不在だ。

だからこそ、グソクムズが歌う「私の歌」は、切だ。

誰もがそれぞれの苦しさを抱えている。誰をも貫く表現は難しい。そんな中で、生きづらさとどう向き合うのか。グソクムズの音楽はそれを教えてくれる。

突然の通り雨に傘を忘れ、雨宿りをしようとしたら雨が上がる。自分のやることなすことが全部裏目に出ているように思える、そんな様子を歌った“すべからく通り雨”。

<変わりのない毎日 訳もなく踊りませんか?>と、代わり映えしない毎日に「踊り」というささやかな喜びを添えてくれる“駆けだしたら夢の中”。

<扉は開けておくよ 君がこないとしても 間違ったままで踊ろう ステンドの夜に>と、いつまでもあの人の事を忘れられない自分を肯定してくれる“ステンドの夜”。

見慣れてすり切れた街の中に、輝くものがあることを教えてくれる彼らの楽曲は、飾り気のない生活のリアルを描いている。これは「若者たちの共通観念を歌う」というはっぴいえんどの到達点と重なる。

半世紀の時を超え「若者たちの歌」を歌う両者の姿は、私がどう生きるかとオーバーラップしていくのだ。

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