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30歳になったマカロニえんぴつ・はっとり。「自分がエキサイトできる表現をやりたい」

2023.7.12

#MOVIE

はっとりは言葉の人ではなく視覚の人? 「アレンジはいつも映像的に組み立てる。あの作業を奪われたら、やりがいの半分以上を奪われるのと同じ」

ー完成した映画自体に対しては、特にどんな部分が印象的でしたか?

はっとり:(監督の)千原さんが「これは映画じゃない」とおっしゃっていて、それがなんとなくわかるというか、流れ的なものはあまり重視してないんですよね。アートディレクションとかデザインをされてる方だから、もっとアートに近くて、僕はどのカットも画角がすごく面白いと思いました。普通であればもうちょっと引きのほうが見やすいシーンでも、「見やすさを排除してでも、この色味を強く見せたいんだろうな」とか、そういう画角であったり、色使いにすごく気を使ってやられていたなと。

『アイスクリームフィーバー』予告編第2弾。音楽は小沢健二が歌うエンディングテーマ“春にして君を想う”

ー特に印象に残っているシーンはありますか?

はっとり:銭湯のシーンは好きでしたね。あの雰囲気だけポツンと、ちょっと異質な感じがして、ロケーションもちょっと違和感あったじゃないですか。全体的にはおしゃれだったりスタイリッシュだったりするなかで、あそこだけ急に庶民派なシーンが混ざるのが違和感として面白かったです。

ーはっとりさんの視覚的、映像的な感性についてもお伺いしたくて。マカロニえんぴつは歌詞の評価も非常に高くて、はっとりさんのことを「言葉の人」と思ってる人も多い気がするんですけど、でもこれまで取材をさせてもらってきて、本人は意外とその自覚がないのが面白いなと思っていて。もともと音楽と並行して漫画家を目指していた時期もあるそうですし、これまで活字より映画やアニメに触れる機会のほうが多かったそうですが、ご自身では自分の感性をどう分析していますか?

はっとり:なんでも映像的に捉えてるんだと思うんですよね。僕はちっちゃいときからずっと絵を描くことが好きで、絵を描くのが苦手な人は平面的にものを描くんですけど、僕はちっちゃいときから立体的にものを描いていて、父親にそれを感心されていた記憶があって。

それは音楽に対してもそうなんですよね。マカロニえんぴつのアレンジは僕が中心になって考えていて、バンドのアレンジを誰かに頼んだことは1回もないんです。この作業を奪われたら、やりがいの半分以上を奪われるのと同じ。僕にとってはアレンジの仕事が絵を描くことに取って代わってるんです。アレンジはいつも映像的に組み立ててるんですよ。

マカロニえんぴつ“愛の波”のミュージックビデオ

ーそれは抽象的なイメージみたいなものが曲ごとにあるということなのか、もっと具体的に、DTMの画面を思い浮かべてるのか、それともバンドで演奏してる画を思い浮かべてるのか、どれが一番近いですか?

はっとり:それはもう全部ですね。おっしゃる通り、宅録をしてないときでも、頭の中にDTMの画面が出てきたりもするんですよ。テンポの数字とトラックの波形とグリッドの線が、スタジオでアレンジをしてるときにも常に浮かんでるんです。

ライブで演奏してるときのことを想像してる瞬間もあるし……でも一番多いのは「あのバンドのあの曲のあの感じ」みたいなのがイメージとしてあるんですよ。自分のなかではそれをイメージした瞬間にもう完成形は見えていて、そこから「スタジオにあるこの楽器たちで、どうしたらそこに持っていけるのか」を考えるんです。

はっとり:でもそこに向かっていく途中で意図しないことが起こるんですよ。たまたまエフェクターの電池が切れかけてて、細い音になった。でもこの細い音が意外といいから、「イントロにこの音を入れて、こんな感じで弾いてみて」とか、違うアレンジに進んでいったりするのも楽しい。で、そうやってどんどんどんどんレコーディングが長くなってくる(笑)。

ーあはは。でもやっぱりすごく映像的なんですね。

はっとり:絵を描いてるときも一緒でした。なんとなくイメージはあるんだけど、描いていくうちに、「なにこれ?」ってなるんです。でもその「なにこれ?」があるから、自分も楽しませられる表現になってるというか。歌うことと歌詞を書くことはなかなかね、自分を楽しませる表現ではないんですよ。矢印が外にだけ向いてる表現だったら、きっとつらくなると思うんです。もの作りのきつい部分だけがどんどんどんどん膨れ上がっていく気がする。そうじゃなくて、ちゃんと「自分も楽しい」っていうのが、曲のアレンジと絵を描くことなんですよね。

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