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アイドルグループの真正性と、Perfumeの特別さ
つやちゃん:そうですね。真正性って本当に難しいですね。いろんな真正性の表し方、アプローチの仕方があって、ダンスボーカルグループの人たちはそれをいろんな形で示すんだけれども、うまくいったりいかなかったりする。非常に緊張感があります。
伏見:緊張感があるのは面白いことだと思っていて、それはたぶん、ジャンルレス時代だからこそというのもありますよね。いわゆるボーイズグループ、ガールズグループの真正性は、たぶんファンに対するサービス精神にあって、それはいわゆるアーティスト然としたミュージシャンには無いものですよね。手厚いサービスをする音楽家もいるけど、真正性の必須条件ではない。あとなにより、ダンスを踊れるということが、ほとんどのボーイズグループ、ガールズグループには必須になっていて。特にK-POP以降は本当にそうだと思うんですけど、身体があるということが大事で、逆にそれさえ押さえていればジャンルレスでいける。
—ところで、Perfumeが年内で「コールドスリープ」することが先月発表されました。ある種人形のようにパフォーマンスをする、そのパフォーマンスが素晴らしいという意味で、BABYMETALの一件からも連想される存在だと思うのですが、今日のお話の文脈でいうとPerfumeはどのように位置付けられるでしょう?
清家:Perfumeとベビメタのボーカルは、同じ広島アクターズスクール出身なんですよね。Perfumeは、文脈としてはYMOがあるんだろうと思います。YMOは、生の楽器でさも打ち込みかのように生演奏する、人間が機械の真似をするということをいち早くやったわけですよね。Perfumeはそれを、踊るという形でやった。そういう文脈を引くことはできると思います。
伏見:そうですね。ボーカルを人工的なものとして捉えるというのが、CAPSULEの頃からの中田ヤスタカのサウンドスタイルですよね。すごく記名性が高い。中田ヤスタカのアイコンと言えるリップシンク的な表現と、アイドルカルチャーがうまく重なったのがPerfumeなんじゃないかと思います。J-POPの中でも先鋭的なところにいた人がやっている音楽を、アイドル的な立ち位置のPerfumeが演じることで、アイドル人気もあったし、いわゆるロックリスナー的な人たちからも信頼を置かれるようになった。ジャンルがぶつかるときの緊張感みたいな話で言えば、見事に双方の真正性が一致した例なんじゃないかと思いますね。それで、みんながハッピーなまま、20年以上、メンバーが変わらないアイドルとしては非常に息の長い活動を続けられたということなんじゃないかなと思います。
つやちゃん:そうですよね。やっぱりライブパフォーマンスがすごいじゃないですか。身体的なすごさに、テクノロジーが接続されている。人間の肉体とテクノロジーがぴったり合う感動を突き詰めることで、そこにエモーションが生まれていく、ということをやった人たちなんじゃないかと思います。人間的な汗と血とでリアリティを作っていくのではなく、ポスト人間的な真正性みたいなものを作り上げてしまった、そういうすごさなのかなと思います。
清家:テクノロジーと結びつけることで、人間的な真正性についてケチがつく可能性を最初から無くしたのは、すごく上手いなと思います。アンドロイドとかマリオネットみたいな感じのコリオグラフィをやるPerfumeの方が、BABYMETALよりも人形浄瑠璃的なんじゃないですかね。