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BABYMETALから考える、「ロッキズム」とジャンルのオーセンティシティ

2025.11.21

#MUSIC

メタルの真正性と、自作自演ではない真正性の示し方

伏見:バンド / ロックのリスナーと、メタルリスナーも、ちょっと倫理観が違うのかなと思っているんですけど、清家さんが思うメタルのオーセンティシティというか、「メタルにはこれがないとダメでしょ」というのはどこにあると思いますか?

清家:怒りです。

伏見:即答でしたね……!

清家:自分はそもそもアイドルとしてさくら学院が好きで、BABYMETALもその流れでわりと初期から聴いていて、好きではあったんですけど、「メタルか? メタルとして好きか?」と言われると、いまだに「そうです」と言い切れない部分もあります。本当に怒っているとき、憤っているとき、鬱屈しているときにBABYMETALを聴くかと言われると、例えばアイヘイトゴッド(EYEHATEGOD)とか、デプレッシブブラックメタルみたいな、アンダーグラウンドの、オーセンティックとされるものの方を聴いてしまいます。怒り、そこにシャバさが入っていないかどうか、みたいなところが、個人的にはいちばん求めている部分ですね。「負のパワー」みたいなところですよね。(ジャンルの始祖である)ブラックサバスの1stの1曲目からして負のパワーがすごいので、あれに引き寄せられる人は皆そうなんじゃないかなと思います。

つやちゃん:メタルの場合、共同体的というか、ファン同士が築くメタルトライブ的なところに真正性があって、且つ、扱うテーマも悪魔とか死とか、誇張されたシンボルを過剰性をもって表現していくみたいな、そういうところがロックとメタルの違うところなんじゃないかと思います。BABYMETALはその両方において異端なんですよね。演奏はしていないから、ロックの自作自演主義的な価値観とはズレていますし、かわいい時点でメタルの純粋主義みたいなところからもズレているという。ああいう批判が出てくるのは、異端的な立ち位置だからでもあるんじゃないですかね。

清家:ヒップホップにおけるBABYMETAL的な存在ってなんだろうと考えてみると、『ヒプノシスマイク』が近いかなと思います。歌詞を演者が書いていないのは、キャラクターが書いているということにすればなんとかなると思うんです。ただ、一番聴いていて引っかかったのが、(曲やパフォーマンスによって、一人のキャラクターの音楽的な)スタイルが変わるんですよね。いきなりオートチューンがかかってフローし始めると、どうした? 人が変わっちゃってない? と思ってしまいます。さっき言っていた「自分はこうだ」というのを出す場所なのに、その自分が曲ごとに変わるというのが、けっこう引っかかりました。

つやちゃん:自分たちで歌詞を書いていない例としては、XGとかもそうですよね。でも、あれはあれで面白いやり方ですよね。歌詞を書いてないけれども、ラップのクラシック曲をカバーするとか、ビートジャックするとか、そういう部分でヒップホップカルチャーへの忠誠心を訴求して、ヒップホップ的真正性を獲得していくという戦略をとっていると思うんですけど。

伏見:そうですね。個人のメンバーがリスペクトを示すことによって、XGという集合体が真正性を保つみたいな感じがありますよね。実際ヒップホップ好きなんだろうし。

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