メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

春ねむりのカウンター、NENEのビーフ。Jヒップホップに見る、歴史を知ることの重要性

2025.9.16

#MUSIC

エンタメを通じた啓発の可能性

つやちゃん:日本はエンタメとカルチャーが切り離されすぎているなと、いつも思っています。楽しさとか娯楽性はエンタメの領域、一方で歴史とか思想とか社会性はカルチャーの領域、みたいな感じで、パキッとわかれてる気がしていて。アメリカではケンドリック・ラマーがグラミーを取るし、ビヨンセがブラックフェミニズムみたいなことを歌う。ヒップホップとかジャズとかソウルといった大衆音楽が、エンタメであると同時にカルチャーで、そこが地続きにあるのが当たり前じゃないですか。日本でそこをつなげていくのはそう簡単じゃないですけど、我々のやれることとして、「翻訳していく」というのはひとつできることなんじゃないかなと思っています。

つやちゃん:例えば、エンタメのすごく売れている人たちについて語るときに、背景にある歴史思想とか文脈を語ることが必要なんじゃないかなと。エンタメの人はカルチャーの人たちのことを小難しいと思ってるし、カルチャーの人たちはエンタメの人たちを「中身のないことばかり言って」みたいに捉えがちかもしれないんですけど、「そうじゃないよね」っていうところが、カルチャーメディアとして大事だなと思いますね。

風間:それに関しては難しくて、アメリカを見ていると、むしろいまはもう1回分けて考えようという動きがあると思うんですよね。ベンソン・ブーンとか、サブリナ・カーペンターとか、アメリカンポップス的な意匠を今もう1回呼び戻すような、1回ちょっとエンタメの方に戻ってみるみたいなタイミングなのかなってという気もします。

つやちゃん:うん、向こうはそうだと思いますよ。日本はその前提にすら達してない、まだ1周目にもなってないみたいな……。エンタメって、さっき島岡さんが言っていた「いきなり政治の話をするんじゃなくて1歩目、2歩目からだよね」という意味で、すごく有効だと思うんですよね。自分がエンタメを通して(社会のことを)学んできたっていうこともあって、そこの可能性は感じるんですよね。

島岡:はい。最近、NHKの『ひとりでしにたい』っていう綾瀬はるかさんのドラマを見ていたら、ヒップホップのリファレンスっていうか、親子でラップする部分が出てくるドラマで、「ケンドリック・ラマーとドレイクのビーフが〜」っていうセリフがあったんですよ。まさか日本のテレビドラマでも聞くとは! と思ったんですけど。綾瀬はるかさんがブレイズっぽい髪型をされていたり、ヒップホップ像にステレオタイプ的な面はあったものの、フェミニズム的な内容の話でヒップホップの精神性が有効に用いられたドラマでした。

風間:Worldwide Skippaは、(メッセージを)声高に言うよりも意識にすり込むようなアプローチを考えているとインタビューで仄めかしていました。クラブや街で耳にして、普通に聴き心地はいいけど「あれ、なんか今の歌詞?」みたいになる、っていう。それも有効な場面があると思いますね。あと、今回日本語ヒップホップでその応答があったっていうのもやっぱり1つの重要な要素で、ヒップホップはSoundCloudとかで吹き込んだものをすぐ上げられるという応答速度もあるから、フォーマットとしても反応に向いてるだろうし、ただ、それを正しいというか、良い使い方で使っていかないと、これは毒にも薬にもなるんだなっていうのも感じました。

連載もくじページへ戻る

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS

『シカゴ・ハウス大全』が8月刊行、500枚以上の作品レビューや座談会を収録 👇👇来日公演まとめは「#来日」に👇👇 音楽フェスや芸術祭、映画祭は「#フェス情報」から👇 Wet Legの来日ツアーが2026年2月に決定、2ndアルバムを引っ提げて東名阪