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人の悩みにどれくらい介入すべき?
ーRHYMESTERの活動を始めた頃は、まだヒップホップシーン全体が若かったので、先輩があまりいなかったんじゃないかと思うんです。
宇多丸:初期は怖い先輩もたくさんいましたけど、結果的には後輩の方が多くなりましたね。
ーそういう環境に身を置いていたから、先輩としての立ち振る舞いが身についたという感じですか?
宇多丸:どうでしょう? 意外とヒップホップシーンって実力主義だから、みんなが思うほど上下関係があるわけじゃないんですよね。クルーの中にはそれなりにありますけど。どんな若手にも「RHYMESTERです。今日はよろしくお願いします」と対等な立場で挨拶しますし。「ファンです」と言われても「こちらも君に負けないようにがんばります」っていう感じで。基本的にはフラットなんですよね。10歳くらい下の世代までは、全然「シローくん」って呼んでくるやつも多いですよ。
後輩にダメ出しもしないし。FUNKY GRAMMAR(RHYMESTER、EAST END、RIP SLYME、KICK THE CAN CREW、MELLOW YELLOWを中心としたクルー)の中では、アドバイスされれば答えるよって感じでしたけどね。当時は僕らが一番場数を踏んでたし、理論もあったから。相談されれば、目線の置き場から何から答えることはできたので。「リハーサルって何のためにあるかわかってる?」なんて意地悪な詰め方しちゃったことはあったと思う(笑)。
ーテクニック論であれば言うべき事ははっきりしてますもんね。
宇多丸:昔は、遊びとしてディベートしてるつもりが、いつの間にか相手をやり込めてることがあって。「◯◯には経済効果があって云々」とか言うから「それホント?」みたく詰めてったら、泣いちゃった……みたいな。言葉の暴力だから、これは本当に慎まないといけません。こういう言い合いは有段者同士が合意のもとにやらないとダメ! ようやく学びました。

ー相談されたことには答えるけど、不用意に首を突っ込まないということも大事ですよね。つい一言口を挟みたくなっても、グッと自重するべきという。
宇多丸:たとえば、けっこう危うい状況にいる知人がいたとして、ある人は「大変なんだから介入した方がいい」という意見、俺は「でも大人なんだから、正直それはその人の責任で選択すべき問題なんじゃないか」と議論になる、みたいな。両方の考えがあってしかるべきだとは思うけど。
ー宇多丸さんは一線を引く考えなんですね。
宇多丸:これも場合によりますけどね。誰かがパートナーから暴力を受けているとか、他者から暴力や搾取を受けている場合は介入した方がいいだろうし。当事者はどうしようもできないけど第三者には解決し得ることもあるので。
一方で、あくまで大の大人が好きでやってることで、ちょっと注意したぐらいじゃ聞かないような場合は難しいですよね。どこまで付き合うのかという話にもなるし。
ー関わる責任の問題にもなりますよね。
宇多丸:だから本当に「場合による」としか言いようがないんだけど、そんなに極端な例じゃなくても、「いつでも相談に乗るよ」みたいなことを言う人は信用できないですよ。「よくそんなこと言えるな」と思うもん。まずもって、その過信が危ない!