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それはアートか、ただの間違いか
ー相談する前に関係性が必要ということですよね。「この人の話なら聞きたい」、「こいつになら話したい」という。この関係構築は、まっさらな状態の新人にはハードルが高くないですか?
西寺:そうかもしれないですね。僕もプロデューサー、アドバイザーとして何度かミスったことがあります。たまにあるんですよね。アートには、当然正解はないし、僕も独学で音楽の仕事をしていて、たいした理論はないんですが、漢字で「大」と書きたいであろう文字を「犬」みたいに余計な点がついていると「この点、いらなくない?」とどうしても言いたくなってしまう。相手が「大」と書きたい場合、単純に間違い、勘違いだから。これは、あくまでも例え話ですが。それをある種「昭和」的な感覚で、正面から指摘するのが本当に正しいのか。
西寺:こういうことがあったということをちゃんと覚えておいて、それを積み重ねていくしかないのかなと。ある自分的に大きいミスをした時に井ノ原くんに相談したんですけど、「郷太くん、それが年輪を作るよ」と言ってました。最高やなと思いましたね。たまたま山小屋みたいな内装のお店でお茶してたんで、丸太が目に入ったんだと思うんですけど(笑)。そういう意味で、40歳くらいの僕と、もうすぐ52歳になる僕では全然違います。同じ丑年でも(笑)。失敗もしてきたので。
ー私は今年40歳になったんですが、中年にさしかかった実感があるんです。でも、だからといってすぐベストな受け答えができるわけじゃないよなと。ちゃんと中年を積み重ねていかないと、いい中年になれないというか。
西寺:僕は常々「おっさん」という言葉の使われ方がよくないと思ってるんですよ。「少年」とか「青年」期に比べて、「おっさん」期が、長すぎる。僕も10代の頃は27、8歳の人を「おっさんやな」と思ってましたけど、今思えばまだまだじゃないですか。20代後半は単なる「あっさん」でしかない。40歳はせいぜい「うっさん」くらい。「えっさん」を経て、50歳になってようやく「おっさん」が完成する(笑)。
