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後輩力=人選
西寺:思い返してみれば、僕は先輩たちに言われたことによく反応する若者だったと思います。凄い人限定という部分もあるんですが、筒美京平さん、湯川れい子さんをはじめ、ASKAさん、佐野元春さん、近田春夫さん、小西康陽さん、宇多丸さん、いろんな先輩が何気なく褒めてくれたこととか助言してくれたことを今でも覚えてますね。
ー『J-POP丸かじり』に収録されている先輩方との対談を読むと、西寺さんの後輩力のようなものを感じます。アドバイスをいい感じでキャッチする能力というか。先輩方もアドバイスしがいがあったと思うんです。

西寺郷太が幼少期の頃から親しんできた歌謡曲やJ-POPをテーマに取り組んだ原稿や対談記事を集め、新たにスペシャル対談も収載した1冊。自身の音楽活動はもちろん、マイケル・ジャクソンを始めとする洋楽に関する考察、自らの青春期を基にした小説などの執筆活動で知られている彼の、初めての日本のポップ・ミュージックについての考察本。
西寺:僕は人にアドバイスしてもらって、それを取り入れないやつが大嫌いなんですよ(笑)。12年前くらいに仕事でイギリスに行ったことがあって、その頃はTwitterも平和だったから「イギリスの美味しいお店募集」と何気なく書いたんです。そしたら東京スカパラダイスオーケストラの大森はじめさんがリプライでカレー屋さんを教えてくれて。その時いた場所から電車で1時間くらいの結構な距離だったんですけど、行きましたもんね。せっかく大森さんが教えてくれたんだから。
小西康陽さんに「弾き語りが今、一番面白い。郷太くんもやったら楽しいよ」と言われて、すぐに始めましたし。
逆パターンで言えば、井ノ原快彦くんとずっと仲良くしてるんですけど、この間僕の部屋に一緒にいた時に「ベース買おうと思うんだけど、どれがいいかな?」と彼に聞かれて。「一本なら、フェンダーのUSA製のジャズベースがいいんじゃない。超定番」と答えてスマートフォンで検索して「これとかいいよ、色も可愛いし」って言ったら、30分後には渋谷の楽器店に一緒に行ってそのベースを買ってましたからね。教えた方としては、うれしいじゃないですか。
ーちゃんとリアクションがありますもんね。
西寺:こちらも音楽のプロとして、相手のいろんな状況を踏まえて一生懸命考えてベストな答えを伝えてますからね。そういうことの積み重ねで、次も相談に乗ろうと思えるし。逆に言うと、「この人のアドバイスは取り入れるかわからないな」と思ってる相手に聞いちゃダメってことなんですよ。僕に後輩力があるとしたら、「この人の話なら絶対に聞きたい」という人にしか聞いてないということでしょうね。

ーもう人選の時点である程度決まっているというか。
西寺:そうそうそう。それが僕の人生のすべてのポイントかも知れません。人選。相談する相手を選ぶのは大事です。だから、聞いてもないのに勝手にアドバイスしてくるやつは最悪です(笑)。僕がアドバイスを求めてきた人に「ほんまか?」と何回も確認するのはそのためですね。
ー人生相談の安請け合いはしないと。誰にでもアドバイスして、それを実践してくれないからと不機嫌になっていたら、それこそ暴力的ですもんね。
西寺:そう、それは大事かもしれない。