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話を聞きにきた若者にはまず「ほんまか?」
ー西寺さんが音楽を始めた頃とは、音楽を取り巻く環境が技術的にもビジネス的にも一変しているのも難しさの一因ですよね。
西寺:そうですね。僕の世代のミュージシャンはみんな思ってるはずだけど、今の18~25歳はめっちゃすごいんですよ。こないだ立て続けに友成空くんという23歳のシンガーソングライターと、blend houseという名前で徳島で活動している24歳の宙樹くんと飲んだんですけど、2人ともコロナ禍に学校とか部活とかがなくなって、何かしようと思って楽器と作詞作曲を真剣に始めたと。18歳くらいからの2年間、外にも出れないからすごく集中して音楽に打ち込んだんですって。たった5年ですごい結果を出してる。
あと僕らの時代はギターならギター、ドラムならドラム、ひとつを極めるのが偉いという感じだったんですよ。だけど、今の若いミュージシャンはいろんな楽器ができる。大樋ゆう大くんなんて鍵盤もギターもベースもできるし、フルートまで吹けてびっくりします。

西寺:今日着てるTシャツも、友成くんが僕の部屋にあるラジカセとカセットテープを珍しがって写真に撮ってたんですね。それをプリントしてみたんです。僕にとっては当たり前のカセットだけど、知らない世代だからこそ気付ける価値もあるし。
だから、若いミュージシャンにアドバイスする立場だったり、今だったら早稲田大学で先生として講座を持って作詞を教えていたりはするけれど、大前提として「自分の方が偉い」とは全く思ってないですね。本当に心から思ってないです。自分が気をつけていることがあるとすれば、めちゃくちゃ学ぶ姿勢でいることかも。
ー一方的に教えるだけの関係性じゃない、というのは重要ですよね。
西寺:やっぱり、キャッチボールができたらお互い気持ちいいじゃないですか。西寺郷太ソロのバンドも僕以外、20代3人、30代前半のドラム、岡本啓佑くんという感じですが、基本「めっちゃええやん」としか、言ってないし(笑)。もちろん人選はこだわりますし、そこに関しては冷徹ですけどね。選んでる時点ですでに終わってる、と言いますか。
ーまさに、行ったり来たりがあるからこそコミュニケーションが成立するという。
西寺:教えるにしても、聞かれてもないのにこちらから教えることはないですよね。よく「プリンスについて教えてください」とか言われるんですよ。その時は「ほんまか?」と聞くんです。鬱陶しいかもしれんけど、何回も「ほんまか?」って(笑)。
FIVE NEW OLDのHIROSHIくんはフェスで会った時に「郷太さん、『プリンス論』読みました。仲良くしてください」と言ってくれて。その時も「ほんまか?」と(笑)。その後もわざわざ僕の個展に来てくれたりしたから、「ほんま」と認定してそこからは僕の知っていることをいろいろ話してます。
