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精神科医、ラッパー、怪談作家。Dr.マキダシの「分人的」人生相談論

2025.12.25

#MUSIC

怪談作家としては面白いけど、医師としては……

ー例えば怪談には「ヒトコワ」(※)と呼ばれるジャンルがありますが、なかには「怖がってる場合じゃなくて病院や警察に連絡しなくちゃダメじゃない?」と思える話も多いですよね。むしろ幽霊であってくれた方が安心できるというか。

※幽霊ではなく、生きている人間が原因の怖い話

マキダシ:僕も精神科医になってからは、そういう話に病的な要因を感じてしまうとやっぱり「怖い」だけでは片付けられなくなりました。正直、診療していると怪談に近いような話を聞くこともあるんですけど、医師として関わっている以上はエンタメにはできないです。怪談のイベントでヒトコワ系の話をしなくちゃいけない時は、怪談なのかどうかよくわからないエピソードでしのぐことが多いですね。

『トラウマ怪談録 精神科医が語る本当に怖い話』(Dr.マキダシ著 / 竹書房)
濃密で奇怪な怪異が読者の脳髄を恐怖で揺さぶる……。現役で精神科医として勤務する著者が圧倒的筆致で描く実話怪異譚。

ー怪談作家としては面白いけど、医師としては面白がるわけにはいかない、という。誰しもそういった自分の中にそういった多面性を持っていますよね。

マキダシ:例えば、サラリーマンの方が後輩に相談された場合でも、仕事の先輩としての答えを期待されているのか、パパの先輩としてなのか、人生の先輩としてなのか、あるいはどれでもなくてただ話を聞いてほしいだけなのか、いろいろあるじゃないですか。やっぱり、相手が自分のどの部分を求めているのかが大事ですよね。

僕の場合は精神科医、ラッパー、怪談作家とありますけど、どれにも精神の健康は関わってくるので、共通のベースとしてそれがあるという感じです。

ーということは、自分がどういった側面を持っているかを知っておかなくちゃいけないですよね。漠然とした「自分」ではなく、因数分解して自覚しておくというか。

マキダシ:そうですね。僕みたいに肩書きがパキッと分かれていればわかりやすいですけど、そうじゃない場合も往々にしてありますから。

ーまた別のトークイベントで、高田公太さんがマキダシさんに「精神疾患があるかもしれない人が怪談を聞いてほしいとやってきて、それを全て肯定して受け入れてしまうと病状が悪化する可能性がある場合、どうするの?」というようなことを質問していて。そのイベントでは結論が出ないまま次の話題に移っていたんですけど、ものすごく興味深い論点だと思ったんですよね。

マキダシ:めちゃくちゃ難しいですよ。高田さんも「意地悪しようと思った」って言ってました(笑)。自分なりの回答ですけど、怪談作家として話を聞いているということを強調して伝えますね。精神医学的に何かを判断したりはできませんが、怪談に関わる者としてあなたの体験を尊重しますと。そこを切り分けて、はっきり相手にわかるように提示するしかないんじゃないかなと思います。

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