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「正しくなさ」と心の健全
ー「親身に話を聞く友達」という関係性が重要というのは、まさに人生相談の意義だなと思いました。みんながみんな病院に行けばいいというわけでもないという。
マキダシ：僕はずっとサイエンスを学んできてるし、正しくて害のないことに重きを置いているんですけど、今の世の中の風潮として、「正しさ」のプライオリティが下がっているのを感じていて。いろんな情報が溢れかえっているから、各々が信じたいものを信じるような感じですよね。事実としての正しさという、そういったものの価値は変わらないけど、それに対する需要が下がってきている。
そう考えると、医療以外にすがるものがあるのは全然ありだと思うんです。他人の人権を侵害するようなものでなければ、その人自身が健全にしんどくなく暮らしていける何かがあっていいと思います。
ーそれこそヒップホップや怪談は、ある種の「正しくなさ」を内包していますよね。
マキダシ：最近は麻痺してたんですけど、医者やりながらその二つに精を出してるというのはすごく趣味悪いなって（笑）。新人の看護師さんが僕の活動を知って「うげー」って顔してましたから（笑）。
でも、僕の中では近しいものを感じているんです。この社会で生きる上で声にならない声を持った人たちが、それを生きながらにして言葉にするのがラップだと思うし、生きているうちに残念ながら声にできなかった人が何らかのメッセージを届けてくれるのが怪談や心霊だと思うから。どちらも、社会の輪の外にいる誰かがその内側に向けて何かを話すという構造なんですよね。精神医療に関しても同じで。結局、僕はそういうものが好きなんだろうなと。
ー以前、トークイベントで怪談作家の高田公太さんに伺ったんですが、実話怪談というものは様々な人に取材するのが主な作業で、どんなに荒唐無稽な話でも否定せずに聞かなくちゃいけないんだと。それは、すごく人生相談に通じる部分だなと思ったんです。
マキダシ：うんうん。基本的には体験者さんの見えたもの、聞こえたものを信じるところからはじまりますね。例えば「死んだおじいちゃんの声が聞こえた」と言われたとして、「そんなわけないじゃん」と僕が言ってしまったら意味がなくなってしまう。どういう思いがあってその声が聞こえてるんだろうと、体験の背景にある医学的な精神や身体の状態について常々考えるようにしています。そう考えると、すごく医療に近いと思うんです。
