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「心構えじゃなんともならんよ」
ー前回お話を聞いた桃山商事の清田隆之さんは新聞で人生相談を担当されているんですが、読者の「相談者に助言したい」「なんなら説教したい」という欲望を感じることがあって、それには抗っていきたいとおっしゃっていました。相談者に寄り添うスタンスが一般的になったとはいえ、読者の野次馬的な好奇心は健在なんだなと。
瀧波:すごく長い相談文を短く編集するので、どれくらい大変なのかが伝わらなかったりもしますからね。私も、読む人のことは多少意識しないといけないと思ってます。
ーどこまでエンターテインメントにするか、というような?
瀧波:私の場合は、相談者にも読者にも役に立つということが一番大事かなと思っていて。読者が相談者をジャッジするんじゃなくて、「自分もこうすればいいんだ」と思いながら読めるものにする。そうすれば相談してくれた人にとっても絶対嫌な内容にならないし、みんなにとっていいじゃんと。

瀧波:私に送られてくる相談は、近い年代の女性からの「困りごとが気にならなくなる心構えを教えてください」というのがすっごく多いんです。
例えば「子供を産んだけど夫がモラハラで何もしてくれない。まだ仕事復帰できないし、未来の展望が見えなくて本当に辛い。こんな私でも前向きに生きていける心構えを教えてください」というような。こういった「心構え系」が本当に多いんですよ。
待って待って待って、心構えじゃなんともならんよ、ということをやんわり説明して、その次に具体的な方法を伝えるようにしてます。二段構えです。
ーどうして「心構え系」が多いんでしょうか?
瀧波:やっぱり構造の問題なんですよね。この例だと、子供を産むことによって完全に夫の支配下になってしまって、逃れようがない。本人もどうにもならないことがわかっているから、その中でどう生きていくか。気持ちの切り替え方を教えてくれというふうになるんです。
上司からのパワハラも、会社という組織構造の問題なので、本人だけでは変えられない。そういう悩みが、女性の場合はすごく多いと思うんですよね。
構造じゃない悩みって何があるんだろう? ……内気で友達が作れないとか、自分の性格や外見に起因する悩みかな。構造と無関係ではないけれど、何かしら自分で解決する方法があるから、それは心構えで変えられるとは思います。

ーでも、本当に悩みの大部分は構造が関わってきますね。
瀧波:「妻として、母として、娘として」となると、いよいよ構造の問題なんですよ。
ーザ・家父長制という。
瀧波:個人になれないことの悩みなんですよね。個人として自由に行動できないことの悩み。でも、思考にも支配が及んでいるから、心構えで解決しちゃおうとするんだけど、それは無理だよと。「構造の問題だから、なんとかこうしてみよう」と答えるんです。