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映画『ランニング・マン』の音楽が突きつける、今日のメディア環境への警句

2026.1.28

#MOVIE

「革命はタイムラインで起こらない」

実を言うと、本作の中で私がもっとも魅力的に感じたキャラクターは、主人公のベンではなかった。かといって、冷酷非情なハンターたちでもないし、狡猾なプロデューサー=キリアンでもない(彼らのいやらしい存在感はそれはそれで見事なものだが)。それよりも、様々な理由からベンを助け、発奮させようとする革命勢力のキャラクターに魅力を感じた。中でも、匿名の「使徒」として地下で活動し、ネットワーク社の不正を暴こうと企むブラッドリー(ダニエル・エズラ)の姿に否応なく惹かれたのだった。

彼は、自らの手で告発動画を作り、ネットワーク社の電波(回線?)を乗っ取った上で、カーティス・ブロウの軽妙なフロウよろしく真実をズバズバと暴き出していくのだ。彼は、作品のクライマックス部分にも登場し、今度はギル・スコット・ヘロンの“The Revolution Will Not Be Televised”のオケの上で真実を語っていく──。

この映画が我々に伝えてくれる教訓は、まさにこの稀代の名アジテーション曲“The Revolution Will Not Be Televised”(※)に集約されていると言っていいだろう。それはきわめて分かり易いメッセージだ。「テレビじゃ革命はやってない」。「革命が企業の提供で放送されることなんてない」のだ。ブラッドリーは言う。「画面をオフにしろ!」と。

※ギル・スコット・ヘロンの“The Revolution Will Not Be Televised”と言えば、昨年公開されたポール・トーマス・アンダーソンの(トマス・ピンチョンの『ヴァインランド』を原作とする)『ワン・バトル・アフター・アナザー』でもきわめて印象的な使われ方がしていたが、これはおそらくただの偶然ではないだろう。

革命なるものの想像可能性を著しく剥奪されている現在にあって、現状を打破するために私たちができることの第一歩目は一体何なのであろうか。それはずばり、「画面をオフにすること」に違いない。というか、まずそれをしなければ何もはじまりはしないだろう。スイッチを切るべき対象は、本作にならって毳々しいリアリティショーを垂れ流すテレビの画面でもいいかもしれないが、既に読者の皆さんがお気づきの通り、各種SNSや動画プラットフォームを閲覧しているスマホやPCのモニターだ。

画面をオフにしたら、Sly & The Family Stoneやイギー・ポップ、The Rolling Stones、The Allman Brothers Band、そしてギル・スコット・ヘロンの曲を、できるのならば(『ベイビー・ドライバー』のマイルズのように)カセットテープにでも録音して、それを聴きながら外に繰り出してみよう。もしくは、身近な人に会いに行って思っていることを互いに吐き出すのでもいい。アナクロニズムだと笑う奴には笑わせておけばいいのだ。奴らが笑っているうちに、走っていけるところまで走っていってしまおう。

さあさあ、オフだ。「THE REVOLUTION WILL NOT BE ON YOUR TIMELINE」だ。

©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ランニング・マン』

2026年1月30日(金)より全国公開
監督:エドガー・ライト
原作:スティーヴン・キング
■出演:グレン・パウエル、ジョシュ・ブローリン、コールマン・ドミンゴほか
配給:東和ピクチャーズ
©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 
https://the-runningman-movie.jp/

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