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物語と巧みにリンクする、スライ、イギー・ポップ、ストーンズ
本作『ランニング・マン』は、かのスティーヴン・キングが1982年に「リチャード・バックマン」名義で発表した同名小説を原作としている。1987年にはアーノルド・シュワルツェネッガーの主演によって映画化(邦題『バトルランナー』)されているが、大幅な脚色が施されたその旧版に対し、今回の新版は、比較的原作に忠実なストーリーが展開される。
全体を通じて、エドガー・ライト作品特有のキレの良いアクションが随所で際立つ内容で、急転直下の物語およびカメラワークが、実に爽快なリズムを作り出している。時に過剰とすら言えるほどに慌ただしいプロット運びとなっているものの、そうした慌ただしさこそが、「逃げる男」というメインモチーフを際立たせているのがわかる。

使用される楽曲も、実にリズミカルかつ疾走感に満ちたものが多い。初期Sly & The Family Stoneの名曲“Underdog”にはじまり、南アフリカ出身のシンガーソングライター=ジョン・コンゴスによるカルトヒット“He’s Gonna Step on You Again”、Iggy and the Stoogesのプロトパンク名曲“Search And Destroy”、トム・ジョーンズによるジャキー・エドワーズ曲のカバー“Keep On Running”、カナダ系アメリカ人作曲家ガルト・マクダーモットによるソウルジャズ曲“Coffee Cold”、サザンロックの代表格The Allman Brothers Bandの“Revival”、The Rolling Stonesによるファンク風味のロックンロール“Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)”、カーティス・ブロウのオールドスクール名曲“Tough”、ジャズポエットの第一人者ギル・スコット・ヘロンの代表曲“The Revolution Will Not Be Televised”などの各曲が、オリジナルスコアとともに、映画全体のリズムと調和しながら、ときに物語を牽引していくような役割を負っている。さらに言えば、各曲の歌詞内容も劇中で描かれる心象や状況と巧みにリンクしており、当該の曲たちに慣れ親しんできたファンであれば、否応なく身を乗り出さざるを得ないだろう。
しかしながら、そのように(いつものライト監督作品と同じく)いかにも必然性を伴った選曲だと評しうる一方で、映画の要の一つである美術面における協働性という視点では、一見すると、ややチグハグな感があるのも否めない──のだが、これは、あえてそうしているのだと推察してみるべきかもしれない。
どういうことか。この映画で描かれるテクノロジーによる暴力的な人民支配の様相と、それと対応するような(主にスラム地域の)ビジュアルイメージに通底するある種の美学の存在ついて考えてみれば、おのずと意図するところが見えてくるだろう。