漫画家オカヤイヅミさんが、ゲストを自宅に招いて飲み語らう連載「うちで飲みませんか?」。第11回は小説家の柴崎友香さんにお越しいただきました。
学生時代、柴崎さんの小説に背中を押されてきたというオカヤさん。4時間半にわたったサシ飲みから、その模様を凝縮してお届けします。
当日振る舞われた「貝柱としいたけのしゅうまい」のレシピもお見逃しなく!(レシピは記事の最後にあります)
INDEX
集団で移住したい
柴崎:北海道・東川町の日本酒とワインを持ってきました。
オカヤ:ありがとうございます。パッケージがかわいいですね。

柴崎:私は町が主催している「写真の町東川賞」の審査員をしていて、毎年夏に授賞イベントがあって呼んでいただいているんです。東川町は移住する人が増えている街で、新しいお店ができたり、蔵元を誘致してこういうお酒も作っていたりするんですよ。
オカヤ:いいですね。都内は本当に家賃が上がっていて、次に引っ越すときはいよいよ地方かなとも少し思うんですけど、私は北海道に住めるかな……。

1973年、大阪府生まれ。1999年「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年「春の庭」で芥川賞、2024年『続きと始まり』で芸術選奨文部科学大臣賞、谷崎潤一郎賞を受賞。その他の小説に『パノララ』『かわうそ堀怪談見習い』『百年と一日』など、エッセイに『よう知らんけど日記』ほか、著書多数。
柴崎:やっぱり冬が寒いのと、車がないと難しいのはあるかもね。
オカヤ:そうですよね。あと、友達が周りにいないのはやっぱりしんどそうで。
柴崎:本当にね。だから、この間会ったときもその話になったけど、集団移住ですよ。
オカヤ:最近友達ともよくその話題になります。単身中年女性の集団移住。移住先のコミュニティにうまく入れなそうな人たちで、みんなで一緒に行けばいいんじゃないかって。
柴崎:一人で知らない土地に越すのはなかなか大変だからね。誰かいるほうが、地元のコミュニティに参加するハードルも下がりそうだし。
オカヤ:「あそこのお店おいしそうだから行こうよ」とかは、できたいじゃないですか。
柴崎:できたい。富士真奈美と吉行和子と岸田今日子は、ずっと近所に住んでいたんですよね。ああいう感じになれるといいですよね。
オカヤ:仲良しでいいですよね。それぞれが活躍していて。そういえばうちの父親がその三人のドラマをやってましたね(※)。三人で氷川きよしを追いかけて佐渡島に行って、そこで殺人事件が起こる(笑)。
柴崎:あはははは。
※オカヤさんのお父さんは、2時間サスペンスや刑事ドラマなどを手がけるテレビドラマ監督だった。

柴崎:私は若い頃、友達が住んでいた学生寮に入り浸っていたことがあって、こういう居住スタイルはいいなと思いましたね。自分の部屋もあって、リビングみたいなところに行ったら誰かしらいて。
オカヤ:人恋しいけど一人になりたいですからね。一人になれる空間は必要。
柴崎:それで、離れたところに住むにしても、ちょっと集まったり、ごはんを食べれる場所があると一番いいんだけど。すごい売れてお金持ちになったら、建物を買って、一階は本屋とカフェみたいにして……みたいな夢が、文化系の人はありますよね。
オカヤ:わかります。ギャラリーみたいに展示もできて、音楽やる人もいるからたまにそこでライブとかもやって。大学生のときから言ってます。
柴崎:そうそう。文化系の人がよく語る夢。
オカヤ:中年の一人暮らしは、孤独死とかもありますからね。
柴崎:一人で死ぬこと自体はいいとして、倒れた状態で助けが呼べないとか、死んだあとになかなか気づかれないのが困るなあと。
オカヤ:腐りたくないですよね……。
柴崎:見守りアプリを検索したりしてます。
