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フェミニズムを敬遠する人が「騙されて読んじゃう」ように
真造:自分たちはもう高校生を描けないじゃないですか。自分たちが子どもの頃のことなら描けるけど、いまの子どものこととなると。
谷口:小学生のことはギリギリ描けると思うんだよね、真造さんは特に。女子高生は難しいな。私はずっと「売れたいから若者の恋愛を描こう」と思ってたけど、やっぱり描けない。
オカヤ:女子高生は流行りが1年もしないで終わるから、どのみちすぐ古い感じになっちゃうよね。
真造:いま大学生ぐらいの作家さんが描いた漫画を読むと、描写的にはあんまり変わっていない感じがするから、たぶんそこまで気にしなくてもいいんだろうけど……。うっかり間違いを描いちゃうのが怖いですね。
オカヤ:自分の年寄り感があらわになってしまうよね。
谷口:私この前、はじめて「老害」って言われたんですよ。ドラマを見た人が「谷口菜津子のような老害が」ってコメントを書いてて。いつか老害になるから気をつけなきゃ、と思ってたけど……。
オカヤ:えっ。それはどういう点で?
谷口:私のフェミニズムが古い、というようなことですね。私は、わかりやすくして間口を広げることで、「騙されて読んじゃう」ような感じにしようと思っているんですよ。女性として困っていることについて、ワーッと怒っているような作品を描いても、(フェミニズム的な考えを知ってほしい相手には)読んでもらえないから。だから、薬をゼリーで包むような作業をしながら描いているところがあるんですけど、それがダメだという批判なのかな? と受け取りました。
オカヤ:生ぬるい、みたいなことかな。『じゃあ、あんたが〜』はフェアだし、(主人公の)勝男さんに対しても優しいところはありますよね。
谷口:そう。そういう批判や意見をよく目にするし、それは良かったなと思ってます。賞賛されたいわけじゃなくて、議論や話し合いが進めばいいと思っていたから。
オカヤ:うんうん。
谷口:なので、そこはいいんですけど、「老害」と言われて考えた結果、無理してたくさんの人に読まれるために年齢層を下げることはしなくていいなとは思いました。次の作品は大学生か高校生の話にしようと思ってたんですけど、たしかに本当に描きたいことって若い人の視点の話じゃなくて、いまの自分の視点での作品だなと思ったから。
オカヤ:そうですね。それに、いま漫画を読んでいるボリューム層は、もう若者じゃない気がするな。
クソリプを送ってきた人の私生活を垣間見て
谷口:この前、Twitterで私に悪口を飛ばしてきたアカウントを見に行ったんですよ。そしたら、世の中がどうあってほしいかなどの考え方が私とはまるで違うタイプの人だったんですけど、マクドナルドの新作が出たら急いで食べに行ってたり、ブルーインパルスが飛んでるのにはしゃいでたりして、ちょっとかわいいというか、見ているうちにその人のこと嫌いじゃなくなっちゃって。
オカヤ:たしかに生活を見るとね。親戚の嫌なおじさんとかも、嫌なことも言うけど、いい人だったりもするしね。
谷口:そう。その人たちも私もハッピーに生きていくにはどうすればいいんだろう、という活動をしていきたい。考え方がぜんぜん違う人とどうやって関わっていくかみたいなことを、考えたりします。
オカヤ:それは大変だけど、外に出ないとな、とは思ってるな。今年の後半特に忙しくて、どんどん人と会わない生活になっていたから、もっとコンフリクトを起こした方がいいんじゃないかって。人と会わないでTwitterの嫌なやつだけを見てると……。
真造:それはよくない、よくない。外に出て人と会って違和感を感じるのはいいけど、ネット上の画面のみはちょっと。
谷口:どんどん闇属性になっていきますよね。相手を異質なモンスターに感じちゃうと、心に澱だけが残っていくから、そうならないようにそいつの私生活まで遡っちゃうんですよ。

オカヤ:自分のAmazonレビューに嫌なことを書いた人が、他に何にどう書いてるのかとかも見ちゃう。
真造:ああ、それは見ちゃう。
谷口:私も見ちゃう。コンセントのプラグとかに文句言ってたりね(笑)。なんで突然私の漫画読んだんだろう、って。批判的な感想のことは「あんまり考えるのやめな」って言ってもらうこともあるけど、考えたいんです。
オカヤ:谷口さんは、そこから作品も生まれてるし。
谷口:そうですね。この前の『ビーム』の読み切り(=2025年12月号掲載の『モンスタータックル』)は、私にSNSで暴言を言っていた人がきっかけで生まれました。