INDEX
Romyから感じる、1998年から2000年のクラブミュージック
最近の一番の収穫は5月にスコットランドのダンディーという街で行われた『BBC Radio 1’s Big Weekend』というフェスに出演したRomyのライブだ。このフェスはヘッドライナーこそTHE 1975やルイス・キャパルディだけど、全体的に話題の若手やダンス系のアクトが多く出演している。そのいくつかのライブが1ヶ月アーカイヴされていて聴くことができる。配信されたRomyのセットは30分ほどの短いセットだが、Soniqueの“It Feels So Good”のトランスミックスからBinary Finaryの“1998”に自身の“Lifetime”のサンプルを載せるというDJをやっていた。1990年代のヒットチューン、しかも超アッパーなトラックの連発から彼女のオリジナル“Enjoy Your Life”と“Strong”を歌ってセットを閉じる。BBCのライブ音源は1990年代の昔からオーディエンスの音を拾うのがとてもうまいのでフロアの臨場感がダイレクトに伝わってくる、Romyはほんとに愛されている。
このライブを聴いていても、この数年言われている1990年代のサウンドのリバイバルを実感した。そもそもRomyのDJセットでいつもプレイされているNalin & Kaneの“Beach Ball”やFragmaの“Toca Me”は1990年代後半のトランスクラシックだ。前出のBinary Finaryの“1998”などは僕が初めてイビサに行った1998年に世界的な大ヒットとなり、その後10年以上はフロアを沸かせていた。“1998”がAmnesiaのcreamでプレイされた瞬間のフロアの沸騰するような大爆発は一生忘れることができないだろう。
しかし1989年生まれのRomyは当時まだ10歳ぐらい、リアルタイムではクラブに行くことすらできない。彼女のDJもそうだけど、オリジナル曲からも僕は強力に1998年から2000年のクラブミュージックを感じる。たとえ“Enjoy Your Life”はStardustの“Music Sounds Better With You”やピート・ヘラーの“Big Love”、Molokoの“Sing It Back”などのハウスを感じるし、“Strong”はそれこそ最高の90’sトランスだと思う。”Strong”の共作者であるFred Again..も1990年代のクラブ系ディーヴァ=ビリー・レイ・マーティンの名曲“Loving Arms”をカバーしている。彼もきっとRomyと同じように音楽を聴いてきたのだろう。
The xxでもルイ・ダ・シルバの“Touch Me”やKings Of Tomorrowの“Finally”をカバーしていることから1990年代後半のダンスミュージックが彼らのインスピレーションになっていることには気がついていた。しかし世代的にはまったく現場にアクセスできない彼らはどうやって数々の名曲を知ることができたのだろうか。これは完全に僕の想像だが、彼女はほんとに毎日ラジオを聴いていたんだと思う。金曜日のEssential MIxでのライブミックスを毎週楽しみにしながら、いつかクラブへいける年齢になることを待ちきれずに。もし彼女に会うことがあったらぜひその真相を聞いてみたい。