マイルス・デイビスのライブ録音を、演奏順に完全収録した『Recorded Live in Concert at Philharmonic Hall』が、11月25日(水)に発売される。
同作に収められているのは、1964年2月12日にニューヨークのフィルハーモニック・ホールで行われた2公演。この音源はこれまで、プロデューサーのテオ・マセロの発案で、アップテンポ曲中心の『Four & More』とバラード中心の『My Funny Valentine』に分けて発表され、それぞれ名盤として評価されてきた。同作は、未収録だった“枯葉”も含めて全曲を収めた2枚組SA-CDハイブリッド盤。日本企画盤で、単独作品化もSA-CDハイブリッド化も世界初となる。
テーマごとに編まれた2作が「鑑賞用」のフォーマットだったとすれば、本作で聴けるのは、テンポと空間をめぐるバンドの駆け引きそのものだ。
当時のクインテットは、37歳のマイルスに対し、ジョージ・コールマン(28歳)、ハービー・ハンコック(23歳)、ロン・カーター(26歳)、前年に加入したばかりのトニー・ウィリアムス(18歳)という若い布陣。ウィリアムスのシンバルワークはバンド全体を前へ押し出す推進力を持ち、マイルスも自伝で、演奏はほとんどがアップテンポだったと当日を振り返っている。
DISC-1の転換点となるのが、超高速の“ソー・ホワット”からバラード“星影のステラ”への移行。音数で埋めるアップテンポから一転、極端にテンポを落としたバラードでは、音と音の間やホールの残響の扱いが問われる。前のめりなリズムセクションに演奏の質を切り替えさせ、アンサンブルを整え直す狙いがあったのではないか。
DISC-2でも、“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”で空間を広げた後、“ジョシュア”や“フォア”で再びスピードを上げる。この抑制と解放の上下動が、演奏者の集中力を保ち、長いステージを支えている。
マセロによる『Four & More』と『My Funny Valentine』の分割は、各作のコンセプトを明確にした優れたプロデュースだった。しかし実際のステージでは、アップテンポとバラードが隣り合い、その落差がバンドの緊張感を生んでいたのだ。コンサート通りの曲順で聴く本作は、1964年のクインテットがいかに音を組み立てていたかを伝える、生々しいドキュメントといえるだろう。
マイルス・デイビス 『Recorded Live in Concert at Philharmonic Hall』

2026年11月25日(水)
SACD-Hybrid 紙ジャケット仕様
解説:村井康司
SICJ-10026/27(2枚組)
価格¥5,000(抜)¥5,500(込)
<収録曲>
<Disc-1>
1.イントロダクション・バイ・モート・フェガ(未収録)
2.枯葉(未収録)
3.ソー・ホワット☆
4.星影のステラ★
5.ウォーキン☆
6.オール・オブ・ユー★
7.ゴー・ゴー(テーマ&アナウンスメント)☆
<Disc-2>
1.イントロダクション・バイ・ビリー・テイラー(未収録)
2.オール・ブルース★
3.マイ・ファニー・ヴァレンタイン ★
4.ジョシュア☆
5.アイ・ソート・アバウト・ユー★
6.フォア☆
7.セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン☆
8.ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラヴ☆
9.ゴー・ゴー(テーマ&アナウンスメント) ☆
未収録:『フォア&モア』と『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』に収録されなかったトラック
☆:『フォア&モア』に収録
★:『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』に収録