『災 劇場版』(英題:SAI:disaster)が2026年に公開される。
同作を手掛けた関友太郎と平瀬謙太朗は、これまでに短編映画2作がカンヌ国際映画祭に正式招待され、『宮松と山下』で長編デビューした監督集団・5月のメンバー。このたび情報解禁となった『災 劇場版』は、関と平瀬が監督、脚本、編集を担った連続ドラマW『災』(WOWOW・2025年)を再編集したもの。各話完結、全6話構成だったドラマの時系列や展開を大胆に再構築し、世界観やテーマ性を引き継ぎながら新作映画として生まれ変わらせた。
同作は、独特な構造で観客を恐怖に導くサイコサスペンス。交わることのない6人の日常にひとりの男が紛れ込み、それぞれの人生に災いが降りかかる。その異質さに気づく者はおらず、唯一すべてを見渡している観客だけが男の存在に恐怖を抱くことになる。その災いをもたらす男を演じたのは、両監督の前作『宮松と山下』でも主演を務め、本作で再タッグを果たした香川照之。出演には、男を追う刑事を演じた中村アンをはじめ、竹原ピストル、宮近海斗、中島セナ、松田龍平、じろう(シソンヌ)、内田慈、藤原季節、坂井真紀、安達祐実、井之脇海らが名を連ねている。
また、同作はスペイン語圏最大の映画祭であるサン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門への正式招待が決定しており、2026年の日本公開に先駆けてワールドプレミア上映が行われる。映画祭への出品、そして劇場公開によせて、主演の香川照之、監督の関裕太郎、平瀬謙太朗からのコメントが到着した。
『5月』組の監督たちと初めて組んだ『宮松と山下』も充分に狂った作品だったが、今作『災』は6話連続だった長尺のドラマ版でさえ難解奇妙な物語だったものを、三分の一の尺の2時間の映画に編集し直してさらに混迷を極め、理解不能が大前提のような狂作へとぶっ返り、それを二作連続で自身の映画祭に、しかも今回は猛者たちが群雄割拠するコンペティション部門へ招いたというサン・セバスティアンの勇猛果敢さには心底頭が下がる。シーンの順番は滅茶苦茶、私が演じる多岐にわたる人物像がさらにそれを混沌とさせ、一体現地の人たちはどこまでこれを理解するというのだろう。
香川照之
そして来年、本作は劇場公開されると聞いた。元となったドラマ版をその後でも見ることが出来る我々は、まだ筋の答え合わせをする機会があるだけ恵まれている。
世界屈指の美食の街サン・セバスティアン。何はともあれ、そこから黒船は出発する。心配である。
ドラマから産声をあげた風変わりな映画が、サン・セバスティアンという世界的な舞台に呼んでもらえたこと、本当に嬉しく思います。8人の男をさも当たり前のように怪演してくださった香川さんをはじめ、『災』の世界を作り上げた俳優・スタッフの全仕事がただただ誇らしいです。映画愛が溢れかえっているあの街で、この得体の知れぬ作品がどう受け止められるのか…。緊張と興奮が渦巻いたまま上映当日を迎えることになりそうです。
関友太郎
意味もなく、前触れもなく、慈悲もなく、悪意すらなく私たちの人生を壊すものを、人は「災い」と呼びました。それは、恐ろしいほど乱暴な現象にも関わらず、いざ相対するまで、一体、どこに潜んでいるのか感じ取ることすらできません。その “目に見えぬ恐怖” を ”今までにない形” で描こうと試み、この『災』という作品が生まれました。
平瀬謙太朗
”今までにない形” ということを大切にしたので、結果、ドラマと映画、それぞれまったく違う作品になりました。映画『災』は、映画にしかできない形で、観る人の胸中に “目に見えぬ恐怖” を静かに呼び起こします。
この試みが世界に届いたことを嬉しく思うのと同時に、世界中から集まった映画を愛する観客が、この映画から何を受け取り、何を感じるのか、すこしだけ緊張しています。
そして、まずは世界に問うことになりましたが、2026年にはこの ”恐怖” と ”形” を皆様にもお届けします。
NiEW編集部からのひとこと
巷で話題となっていた『災』が映画化……! 光と影、そして水、といった質感が印象的なカットが多かった記憶があり、音楽も素晴らしかった。このシーン、ドラマというより映画みたいだなあ、と思っていたものの、まさか本当に映画になるとは。エンドロールも独特のスタイルでとてもかっこよかったのでもとより映画を前提として作られていたのかもしれないが、香川氏のコメント同様全貌が想像できない。ドラマWシリーズの過去のラインナップをみているとかなりバラエティ豊かで、こんな快作(怪作?)が生まれるWOWOWは、さまざまな動画サービスが群雄割拠のこの時代、まだまだ磐石の位置にあるのだなと確認。(編集部:柳瀬)
『災 劇場版』
2026年公開
香川照之
中村アン 竹原ピストル 宮近海斗
中島セナ 松田龍平 内田慈 藤原季節 じろう(シソンヌ) 坂井真紀 / 安達祐実 井之脇海
監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗
音楽:豊田真之 原案:5月
劇場版企画プロデュース:日枝広道 プロデューサー:西憲彦 高江洲義貴 伊藤太一 近藤あゆみ 定井勇二
配給:ビターズ・エンド 制作プロダクション:AOI Pro. 劇場版製作幹事:電通 製作著作:WOWOW
🄫WOWOW
【STORY】
様々な悩みや葛藤、希望を抱えながら現代を生きる罪なき6人。ところが気が付くと、どの物語にも〝ひとりの男〟が紛れ込んでいる。
男は性格を変え、顔つきを変え、口調や笑い方や歩き方まで変え、全く別々の人間として人々の前に現れる。
そして、次々に“災い”が起こる。“男”は一体何者なのか?彼らに訪れる“災い”とはなんなのか?