『2024年本屋大賞』の結果が4月10日(水)に発表され、宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』が大賞を受賞した。
『本屋大賞』は、新刊書の書店で働く書店員のみの投票によって選ばれる文学賞。書店員自身が1年間に読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思ったかどうかが投票基準となっている。今回ノミネートされていた10作品は、過去最多の530書店736人からの投票によって選出。ノミネート作品をすべて読んだ上でベスト3を推薦理由とともに投票する二次投票では342書店443人が票を投じた。
『成瀬は天下を取りにいく』は滋賀・大津を舞台に、地元を愛し我が道を突き進むヒロイン・成瀬あかりの中学から高校までのエピソードが描かれた連作短編小説。すでに『坪田譲治文学賞』や『キノベス!2024』など数多くのブックアワードを受賞しており、『2024年本屋大賞』で14冠となる。1月24日(水)には大学に進学した成瀬を描いた続編『成瀬は信じた道をいく』も刊行されており、シリーズ累計は50万部を突破している。
表紙には、大津市に実在し2020年8月に惜しまれながら閉店した西武大津店が描かれるなど、地元に密着したストーリー展開も特徴。作中に度々登場する膳所駅には同作の大看板が設置されているほか、滋賀ふるさと観光大使を務める西川貴教も推薦コメントを寄せている。
著者の宮島未奈は同作が単行本デビュー作で、自身も大津市に在住。受賞にあたってコメントを寄せている。

なお、第2位には津村記久子の『水車小屋のネネ』、第3位には塩田武士の『存在のすべてを』が選ばれた。同時に発表された翻訳小説部門では、ファン・ボルム著で牧野美加が訳した『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』が第1位を獲得。ジャンルを問わず、時代を超えて残る本や今読み返しても面白いと思う本を選ぶ発掘部門では井上夢人の『プラスティック』が超発掘本として選出されている。
2024年本屋大賞 結果
大賞(525.5点) 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈/新潮社
2位(411点) 『水車小屋のネネ』津村記久子/毎日新聞出版
3位(403点) 『存在のすべてを』塩田武士/朝日新聞出版
4位(340点) 『スピノザの診察室』夏川草介/水鈴社
5位(263点) 『レーエンデ国物語』多崎礼/講談社
6位(258.5点) 『黄色い家』川上未映子/中央公論新社
7位(227点) 『リカバリー・カバヒコ』青山美智子/光文社
8位(172点) 『星を編む』凪良ゆう/講談社
9位(148点) 『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』知念実希人/ライツ社
10位(131.5点) 『君が手にするはずだった黄金について』小川哲/新潮社
翻訳小説部門
1位 『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』ファン・ボルム 著/牧野美加 訳/集英社
2位 『卒業生には向かない真実』ホリー・ジャクソン 著/服部京子 訳/東京創元社
3位 『不便なコンビニ』キム・ホヨン 著/米津篤八 訳/小学館
発掘部門
超発掘本 『プラスティック』井上夢人/講談社文庫