第48回『木村伊兵衛写真賞』の受賞者が金仁淑(キム・インスク)に決定した。
1975年に朝日新聞社によって創設された『木村伊兵衛写真賞』は、優れた作品を発表した新人写真家を表彰する賞で、これまでホンマタカシ、蜷川実花、川内倫子、梅佳代など、日本を代表する写真家が受賞している。
今回ノミネートされていたのは、うつゆみこ、金川晋吾、清水裕貴、中西敏貴、村越としや、受賞した金仁淑の6名。選考委員の大西みつぐ、長島有里枝、澤田知子、今森光彦ら4名が討議し、3月26日(火)に受賞者が発表された。
金の受賞作品は、10チャンネルビデオインスタレーション『Eye to Eye』、写真と4チャンネルのビデオで構成されるインスタレーション『Between Breads and Noodles』。また、受賞作品展が4月26日(金)から5月9日(木)まで東京・銀座のソニーイメージングギャラリーで開催される。
朝日新聞出版のニュースサイト「AERA dot.」では、選考委員のことばが全文掲載されている。
昨年の講評で、「昨今映像インスタレーションが推挙されはじめている。しかし『写真』 が人間にいかに関わっていくのかを確かめてみたい」という趣旨の文章を冒頭に書いた。1970 年代に荒っぽい「ヴィデオ・インスタレーション」を作った経験のある身としては、今の時代にこそ「動く写真の必然」を考えなければならなかった。
今年の選考会の席上、今森光彦さんが今の映像は「写真」として切り出せる高画質なものであることを話された。また、長島有里枝さん、澤田知子さんは金仁淑さんの縦モニターの映像(「Eye to Eye」)は「写真」として貴重なアプローチであることを力説された。それらについて異論はなかった。
「ヴィデオ・インスタレーション」という「暗がりでの形式」に収まらないその映像は、カメラを持ちゆっくり人の前に出ていく時の避けられない儀式のような、またそこから派生する心の声を聞こうとする過程そのものに立ち会っているような神々しい経験を感じさせる。
大西みつぐ コメント(「AERA dot.」より一部抜粋)
キム・インスクは1978年大阪生まれ。2005年に韓国・漢城大学芸術大学院を修了し、現在はソウルと東京を拠点に活動を展開。多様な「個」の日常や記憶、歴史、伝統、関係性、共同体の中に存在する個々のアイデンティティなどをテーマに、移民や地域のコミュニティーの人々とコミュニケーションを基盤としたプロジェクトを行っている。
第48回木村伊兵衛写真賞受賞作品展
会期:2024年4月26日〜5月9日
会場:ソニーイメージングギャラリー銀座
住所:東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
料金:無料