映画『あずきと雨』が11月4日(土)より東京・東中野のポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。
同作の主人公は、不動産会社に務め、別れたはずのノブと同棲を続けているユキ。彼女はある出来事をきっかけに、家を出て行くようノブに促す。その一方で、ユキは勤務先の不動産会社を訪れたリコの家探しに協力。しかしリコが地方からの家出少女であることが判明する。
「わかっていたけど、わかりあえなかった」というコピーがつけられ、繊細な感情と人間関係が描かれた同作は、隈元博樹が監督を務めた。隈元は2011年の監督 / 主演作『Sugar Baby』が「第16回水戸短編映像祭」コンペティション部門にて審査員奨励賞(ISEC賞)を受賞したほか、カルチャー批評誌『NOBODY』『映画芸術』『Time Out Tokyo』『CINRA』などで映画評も執筆。『あずきと雨』は長編初監督作品となる。脚本は『リスナー』『水魚之交』の久保寺晃一が担当した。
主人公・ユキを演じたのは、自身が監督 / 主演をつとめた『距ててて』が2021年の「ぴあフィルムフェスティバル」で観客賞を受賞するなど活躍著しい加藤紗希。ノブ役を演じたのは、『風のゆくえ』『almost people』で主演をつとめた嶺豪一。リコ役は『天然☆生活』で映画デビューを果たした秋枝一愛がつとめた。
また、加藤紗希、嶺豪一 、隈元博樹からのコメントも公開された。
脚本を初めて読んだときに、端的に言葉で表しづらい関係性がたくさん存在しているところが良いなと思いました。狭い世界の短く小さな事象がつらつらと重なっていくだけの時間。劇的なことは起こらないかもしれないけれど、息苦しくなったりなんだかうずうずぐるぐるとするようなもどかしさを感じつつ、ユキの居場所を探すように演じていました。逃げたり、受け入れたり、立ち入らなかったり、掴めるようで掴めないユキさん。なんとなく監督の隈元さんに重なって感じる瞬間もあったり…。
加藤紗希
嶺さん演じるノブと対峙したときのなんとも言えない近いようで遠い距離に物悲しさを感じたり、秋枝さん演じるリコと一緒にいると勝手に過剰に心配しちゃったり、2人を見ていると安心と心配が交互にやってきて。そんな中のオアシス的な存在が望月さん演じるカナコでした、自由でほっとして大好き。みんな元気かな。
ぜひ劇場でご覧いただけると嬉しいです。
「あずきと雨」を振り返る。
嶺豪一
この、映画のシナリオは誰かの実体験だったのだろうか、あれ、これ自分話したことあるな。なんて、台詞を覚えているとたまにそんな事を考える時がある。
同棲を解消したと同時に、映画の中でも僕はそうなった。現実と映画、日常の中に映画がどろどろと溶け込んできた?
溶けたアイスは冷やせばまた元に戻るのだろうか?
大きい冷蔵庫が欲しいな。そうすれば何でも固まるのではないだろうか。
あっ、そうだ! あの子アイス好きだったな。
雨の日にも晴れの日にもどんな時にでも観に来てもらえたら嬉しいです。
大切な人に出会うこともあれば、その先には別れが待っていたりもする。この別れをどのようにして映画の中で描くことができるのか。そのことは企画の始まりから撮影が終わってもなお、ずっと考えている気がします。
隈元博樹
私自身、この映画のふたりのような経験はありません。ただ、短いながらもこれまでの人生の中で別れてしまった人たちのことを思い出したとき、ユキやノブの気持ちに少しでも寄り添うことができるのではないかと。ふとそんなことを思いながら、久保寺晃一さんが書かれたシナリオと向き合いました。
加藤さん、嶺さんをはじめ出演者の方々はもちろんのこと、スタッフのみなさんに支えられて生まれた大切な映画。
ぜひ劇場でご覧いただけるとうれしいです。