INDEX
初のフィーチャリングは、遠慮のかたまりを一番おもしろがってくれそうな七尾旅人とKuroと
ー今回のアルバムは、初めてフィーチャリングに取り組んだ作品でもありますが、なぜ七尾旅人さんとKuroさん(TAMTAM)にお願いしたんですか?
xiangyu:一番おもしろがってくれそうだなと最初に浮かんだのが七尾旅人さんだったんです。もし旅人さんがダメだったら、フィーチャリング自体やめようかなって思うくらい。それまで1度しかお会いしたことがなかったんですけど、SNSとかでのやり取りや、旅人さんがやってた「フードレスキュー」って活動に私が勝手に参加させてもらってたこともあって、一方的に親しみを感じていたんです。それで思い切ってお手紙と一緒にトラックを送ってみたら、「こんなメロディ浮かんだんだけど」ってボイスメモがすぐに返ってきて。そこからは一度も会えないまま、電話とメールだけのやり取りで曲を作ったんですけど、なんかそれが逆にすごくロマンチックで。ずっと文通しながら曲を作ってるみたいな感覚で、自然とメロウな曲に仕上がった気がします。
xiangyu:しかも、旅人さんって、本当に音楽に誠実な方で。言葉一つ、メロディ一つに対して「こっちの方が伝わると思うよ」とか、「ちょっと伝わりにくいかも」とか、すごく丁寧に向き合ってくださって。こんなに音楽とちゃんと向き合ったことないかもって思うくらい、贅沢な時間でした。

xiangyu:それに、完成後にいただいたリリースコメントがもう本当に私にとって宝物で。1回しかお会いしたことないのに、「東北でボランティアをしたり、横浜の寿町に通う活動をしている彼女をすごく信頼している」と言ってくれたんです。「曲が良かった」とか「ラップが上手かった」とかじゃないんですよ。人として信頼してもらえることってこんなに嬉しいものなんだなって思いました。だからこそ、音楽や表現以前にも、頂いた言葉に恥じないような生き方をしていきたいなってすごく思いました。
ーTAMTAMのKuroさんはいかがでしょう?
xiangyu:Kuroさんのバンド・TAMTAMがめちゃくちゃ好きで、自分のライブと同じ日にかぶっていても、リハの合間を縫って観に行くくらい大好き。旅人さんのように、このコンセプトを一緒におもしろがってくれる人がいいなと思い、Kuroさんにもお手紙を送ったら、めっちゃ長文でKuroさんなりの「遠慮のかたまり対処法」をお返事で書いてくれた最後に「というわけでやります」と書いてあったんです。最高だなって。
xiangyu:一緒に制作した“宇宙包”のテーマである宇宙にまで発想を飛ばしてくれたのはKuroさんなんです。中華の円卓に残された小籠包一つから宇宙を想像する発想は自分にはなかったし、お願いして本当によかったです。「その小籠包を割ったら実は中に宇宙があった」っていう私の変な妄想もおもしろがってくれるKuroさんだったからこそ、生まれた曲ですね。
ー遠慮のかたまりを布教するまでもない方々だったんですね(笑)。
xiangyu:旅人さんもKuroさんも最初から解像度がすごく高い人たちだったんですけど、一緒に制作した後に「打ち上げで前よりも気にするようになった」とか「遠慮のかたまりへのアプローチ方法を考え直してみた」という言葉が返ってきました。すでにそういう感覚を持っていた人でさえ、改めて向き合うきっかけになったことが本当にうれしくて。私が投げた小さなボールが波紋のように広がっていく感じが素敵だなって思います。
ーアルバムがリリースされて、遠慮のかたまりがさらにファンの方やアルバムと出会った人の生活にも広がっていくのが楽しみですね。
xiangyu:そうですね。私はやっぱり、作品を通して人とコミュニケーションを取りたいんだなって思います。
ー最後に、アルバムがリリースされる4月は、新生活が始まる時期で人間関係に悩む人も少なくないと思います。コミュニケーションを大事にしているxiangyuさんが大切にしている考え方や言葉があれば教えてください。
xiangyu:「ちっちゃいことは気にすんな」ですね。音痴って思われたくなくて人前で歌うのが嫌な時期もあったし、人からどう思われるか気になって仕方なかったこともあったけど、「案外誰も何も気にしてねえな」ってことが体感としてだんだんわかってきたんです。
それに今はもう完全に立ち直ったんですが、弟が引きこもりだった時期があって。受験とかがうまく行かず、人生に悲観してふさぎ込んじゃったこともあった。じゃあ、会社員みたいな生き方をしているわけでもない私に何ができるだろうって考えた時に、人前で歌うことかもってぼんやり思ったんです。私が苦手意識を抱えていたことを知っている弟に、「姉ちゃんは30代になってもくだらないザリガニの歌を歌っているよ」って姿を見せられるかもって。それが私のアーティストとしての全てではないけど、仮にこのアルバムが誰にも刺さらなくても、この世の終わりでは絶対にないから。気軽な気持ちで自分を表現していいと思います。

xiangyu『遠慮のかたまり』

4月25日(金)リリース
1.遠慮のかたまり
2. ラスイチのピザ
3. ずっといるトマト
4. 宇宙包(feat.Kuro)
5. はっちゃKO
6. もったいないオバケ
7. ピースオブケイク(feat.七尾旅人)