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私たちはなぜ福田和子に惹かれるのか。石田えり監督主演『私の見た世界』レビュー

2025.7.25

#MOVIE

15年の逃亡劇の末、時効直前に逮捕された指名手配犯・福田和子の人生は、これまでたびたび様々な創作のモデル / モチーフとなってきた。7月26日(土)から公開される映画『私の見た世界』もそのひとつだ。

福田和子の物語はなぜそんなにも、我々を惹きつけ続けるのだろうか。福田モチーフの映画やドラマを「やっていると必ず見てしまう」という安田謙一(ロック漫筆)に、本作と「福田和子もの」についての寄稿を依頼したところ、クスッとしつつもグッとくる不思議なテキストが届いた。

※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

たびたび映像化されてきた福田和子の逃亡劇

映画『私の見た世界』が7月26日に公開される。これほど無視出来ない新作映画もそうはない。なにせ、大好きな福田和子の物語を、これまたずっと好きだった女優、石田えりが監督(のみならず、脚本、編集、主演)するというのだ。

これまでに何度も福田和子の逃亡劇は映画、ドラマ(情報バラエティ番組の再現フィルム含む)で扱われてきた。ウィキペディアで福田和子を検索すると「福田和子を演じた女優」という項目がある。藤山直美主演、坂本順治監督の映画『顔』(2000年)にはじまり、今回の『私の見た世界』の石田えりまで、11の作品が紹介されている。これがすべてかどうかは判断しかねるが、それにしても、の数である。自慢じゃないけど、ほぼすべてを観ている。このリストには再放送(再現ドラマ部分の使い廻し)が含まれていないのだが、数年前にはひと月の間に2度も異なった福田和子ドラマがオンエアされることもあった。

今度はどんな風に福田和子を描くのだろう。あの、手伝いに来た葬儀場からの自転車で逃亡するシーン、あるいは、あの、逮捕のきっかけとなった居酒屋カウンターでの店主との攻防など、お馴染みの名場面は今回、どういう風に演出されるのだろう。強い関心とともに、問答無用でドラマに向かいあってしまう。もはや『忠臣蔵』である。

「今回の福田和子は逃げおおせるんじゃないか」という、いつかの誰かの冗談まじりのポストには笑ってしまった。そう言いたくなる気持ちもわかる。まるで、女優シャロン・テートがチャールズ・マンソンのファミリーに「惨殺されなかった」世界線を描いた、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)みたいな作品が、近い将来、生まれ得ないとは言い切れない。

石田えりは、本作が長編初監督作品となる / © 2025 Triangle C Project

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