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中年の新婚生活と令和ならではのホームドラマの面白さ

事件の真相も気になるところだが、本作の面白さは、50歳の幸太郎と45歳のネルラによる中年の新婚生活や、令和ならではのホームドラマといった側面にもある。仕事ができ、社会的地位もあり、自活能力もある幸太郎が、妻の家に入らざるを得なくなった苦悩や葛藤は切実だ。
そもそも、幸太郎とネルラの新婚生活の拠点は、ネルラの父・寛が購入したマンション。そこには寛に加えて、叔父の孝、弟のレオが住んでおり、週に一度の食事会がある。幸太郎は、舅や小舅ポジションの義理の叔父、そして自分の子どもくらい年齢差のある義理の弟と囲む食卓に、男同士とはいえだいぶ神経をすり減らしている。普段は、出演するテレビ番組における巧みな話術でお茶の間の心を掴む幸太郎が、鈴木家との食卓では会話に困り、気まずい思いをするギャップは、ちょっと面白い。とはいえ、唯一の砦であるはずの妻・ネルラも、何を考えているか分からず、会話の援護射撃をするタイプでもないから、幸太郎の立場はなかなか気の毒なものだ(いうまでもなくこの設定は、「古典的な結婚」の男女を逆転させた構造になっている)。