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第8話、悲しい愛の連鎖が明らかに

黒川や幸太郎のように、私たち視聴者もこのまま最後までネルラの掌の上で転がされ続けるのか……と思いきや、『しあわせな結婚』は最終回直前の第8話で、事件の全貌を明かした。ネルラ(松たか子)の大学時代の恋人で、新進気鋭の画家・布勢夕人(玉置玲央)を殺めてしまったのは、幼き日のレオ(板垣李光人)だったのだ。
事件発生は15年前。鈴木家が所有する倉庫で、階段から転落し、死亡した状態の布勢が発見された。遺体の頭部には、大きな損傷があり、事件性が疑われたものの、事件当時は結局、「事故死」として処理される。だが、当時からネルラを怪しんでいた刑事・黒川(杉野遥亮)は後に、15年の歳月を経て再捜査に乗り出した。婚約者という布勢と最も近しい関係にあり、事件当日に激しい口論を交わしていたネルラ、そして、レストラン経営に乗り出すために金銭的な支援を求めた布勢をたしなネルラの父・寛(段田安則)へと、疑いの目は向けられてゆく。
しかし、再捜査が始まったことを幸太郎が家族に打ち明けた翌日。自ら警察に出頭したのは、鈴木家を縁の下で支えつづけてきたネルラの叔父・孝(岡部たかし)だった。孝は警察からの事情聴取に、首を絞められていたネルラを助けるため無我夢中になり、その場にあった燭台で布施の後頭部を殴ったと語る。
その後、孝に弁護の申し出を断られてしまった幸太郎は、自らの手で真相を掴むべく、ふたたび事件について調べ始める。懇意の法医学者・児玉(佐々木蔵之介)の見立てで、布施の頭部には、それぞれ違う形状の打撲痕が2つあることが判明した。孝の供述通り、布施の部屋にあった燭台が凶器であることは間違いないが、明らかに打撃の角度が一致していない。――つまり、布勢を殴った犯人が、孝の他にもう一人いるのではないか。燭台を両手で握りしめ、覆い被さるようにして布施を殴った人物が。
ネルラが耳にした孝の「お前はやっていない」「いいか? この人を殺したのは俺だ、わかったな」という言葉は、布施に首を絞められ意識を失ったネルラではなく、その人物に向けられていたのではないか。幸太郎の推理は、無惨にも幼き日のレオと結びつく。孝はレオを守るために。レオはネルラを守るために。ネルラも罪を犯したレオを守るためにと、鈴木家の悲しい愛の連鎖が続いていたことが判明した瞬間だった。