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幸太郎と同じく大石静からロマンスを託された黒川

杉野が近年演じてきた役と比べると、黒川は一段と大人びており、どこかミステリアスに見える。連続ドラマ出演作としては前作にあたる反町隆史とW主演だった『オクラ~迷宮入り事件捜査~』(フジテレビ系)で演じた不破利己とは、またどこか違う刑事像だ。黒川はネルラが容疑者となった15年前の事件現場に駆けつけた警察官の一人なのだが、事件以外の彼自身の背景は、第8話までほとんど語られてこなかった。
阿部サダヲが演じる主人公・幸太郎と同じく、黒川も、脚本家・大石静からロマンスを託されたキャラクターと言って良いだろう。15年前の事件をずっと忘れられなかった硬派で執念深い刑事――そんな印象は、本稿冒頭で紹介したネルラのセリフによって、一瞬で覆された。ネルラに振り回されつつも、レジェンド弁護士としてどっしりと構え、圧倒的な包容力で忌まわしい過去さえ受け止める“スパダリ”幸太郎。一方の黒川は、ネルラに対する片思いのもどかしさとままならなさを一身に背負ったキャラクターだ。長年、自分でも気づいていなかった想いを、ネルラ本人にずばり指摘された後、中華料理屋で一心不乱に麺料理をかきこむ黒川の姿。重ねて流れる主題歌“Don’t Look Back In Anger”の切なくも圧倒的な爽快感と、黒川の行き場のない想いの対比が鮮やかなシーンだった。