メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

”お家事”ドラマ『対岸の家事』が結婚と育児の分断を超えた先で描くもの

2025.5.6

#MOVIE

©TBS
©TBS

互いの境遇を分かり合えなくても協力はできる

おたふく風邪にかかった娘の預かりを詩穂にお願いしたお礼を渡す礼子©TBS
おたふく風邪にかかった娘の預かりを詩穂にお願いしたお礼を渡す礼子©TBS

本作で特徴的なのは、詩穂も礼子も中谷も互いの境遇を完全に理解し合っている訳ではないことだ。詩穂は専業主婦で、娘の苺(永井花奈)と散歩をしながらコミュニケーションを取ることも、丁寧な料理を楽しむこともできる。一方で、ワーママである礼子には、そうした余裕は無く、第1話では詩穂の余裕ある生活を妬みながらも、下に見るような言葉があった。教育熱心で計画的な育児をしたい中谷も、詩穂の生活や育児のスタイルについて理解できず、口出ししてしまう。2人のそうした言動は、専業主婦を選ぶことが信じられないという気持ちもあってのことだろう。3人は互いに共感し合っている訳ではない。本作は「分かり合えなくても協力できる」ことを教えてくれる。

専業主婦を選ぶことも、子育てしながら働き続けたいという意思も、計画的な育児をしたいという想いも、どれも間違いは無い。それぞれの生い立ちや価値観、得意・不得意に応じて、より良い選択をした結果だ。専業主婦同士、ワーママ同士だからといって、全く同じ境遇の人は少ないだろう。ほんの少しの差異に目を向けて、同じ境遇にないから分かり合えないと線を引くことは、それこそ、孤独につながってしまう。理解し合えなくても協力はできる、してもらえると思うことが大切だ。

後輩・今井(松本怜生)の落ち込んだ様子に気づいた礼子©TBS
後輩・今井(松本怜生)の落ち込んだ様子に気づいた礼子©TBS

第3話で描かれた礼子の部下で独身の今井尚記(松本怜生)とのエピソードも印象的だった。詩穂から、ワーママとしての大変さをすべて肩代わりするのは難しいと話された翌日に、礼子は今井が隠れて涙を流しているのを見る。普段はマイペースに仕事をこなしていた今井だが、その時は飼っている犬の病状に心を痛め、激しく落ち込んでいたのだ。礼子はペットを飼っていなければ、今井は結婚をしておらず子供もいない。今井は育児のために会社を休みがちな礼子を責めたこともあった。それでも、礼子は泣いている今井に手を差し伸べ、その辛さに共感を見せる。詩穂が母に教えてもらった“海の上に降る雨”(誰にも気づかれないかもしれない感情)を互いに見せ合うこと、そして相手の雨を見たら寄り添って肩を貸すこと。現実社会では意見の違いで分断されがちなワーママと独身であっても、互いの境遇を分かり合えなくても、協力し合えるのだ。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS