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異なる空間や時間を繋ぐ言葉と音

本作の最も興味深い一面は、前述したように、異なる空間、あるいは異なる時間軸にいる、一見、関わりのない人々の言葉や、そこで生じた音、彼ら彼女らが関心を持った事象を繋ぎ合わせながら、物語が前に進んでいくことだ。第1話では、都成剣之介(水上恒司)と木場が話す「外注」と、水町と里見が話す「害虫」が「ガイチュウ」で重ね合わされる。第5話では、田丸哲也(望月歩)と里見がいる喫茶店の店内で、店員が思わず床にお盆を落としたために鳴ったけたたましい音が、次の場面において、塚田竜馬(高橋侃)が出演するライブ会場でのシンバルの音に繋がる。音同士の連なりは、そのまま本作の軽快な疾走感に繋がり、オープニングテーマの柴田聡子&Elle Teresa“ときめき探偵 feat.Le Makeup”、エンディングテーマのS.A.R.“MOON”と見事に調和する。
異なる場面で起こる出来事、あるいは異なる登場人物同士で交わされる会話は、時にシンクロするが、それを唯一知ることができるのは、全体を俯瞰して見つめることができる視聴者のみだという作りも興味深い。例えば、第1話で少しだけ登場した里見と同じマンションに住む「外国人の彼氏っぽい人といる時もある、着物の女性(中村映里子)」の話題は、その後も複数の会話の中に、あるいは実際に登場し、第5話では彼女の「外国人の彼氏」なのだろうアレックス(厚切りジェイソン)が、木場の仕事仲間として登場する。
さらに、第1話において水町と里見がエレベーター内で話している、都成が「エレベーターの『閉める』ボタンと11階のボタンの区別がつかなくて間違える」話は、実際に第3話で、都成が同じエレベーターで2度も11階を押してしまい、行きで折田と鉢合わせ、帰りに折田の元に向かう龍二&久太郎とニアミスするというエピソードで証明される。