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スーパーマンによる「人間宣言」
何よりも本作で観客の胸を打つのは、スーパーマンが宿敵レックス・ルーサーに向けて放つスピーチである。これは、ある種、「スーパーマンの人間宣言」と呼ぶべきものだ。ジェームズ・ガン監督は本作を通じて、スーパーマンに貼られてきた「非人間的な理想」というラベルを徹底的に解体し、観客と同じ弱さや葛藤を抱えた一人の「人間」として再構築した。

このシーンは『アイアンマン』のラストで、主人公トニー・スターク / アイアンマンを演じたロバート・ダウニーJr.のアドリブ(という非常に人間的な演技プロセス)によって生まれた最後のセリフ「私がアイアンマンだ」を思い出させる。これはアイアンマンの正体は「人間」だと世間に告白した、スーパーヒーローによるいわば「人間宣言」であり、この瞬間、神秘に包まれていたヒーロー像は、はじめて私たちと同じ地平に立つ「人間」へと引き下ろされた。
これまでのDCEUが、ヒーローを神のような存在として神話的に描いてきたのに対し、本作『スーパーマン』は、スーパーマンという、「最も人間から遠い存在」を題材に、政治的でありながら、同時にセンスオブワンダーに満ちた娯楽作品として描き出す事に成功している。まさに今という時代にふさわしい、最高級のエンターテインメント作品だ。
『スーパーマン』

監督:ジェームズ・ガン
出演:デイビッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト他
ワーナー・ブラザース映画
大ヒット公開中
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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/superman/