スーパーマンが空から落ちてきた。顔に傷が走り、口からは出血をしている。彼はボラビア国の「ハンマー」と名乗る戦士と死闘を繰り広げ、ついに敗北した——あの「鋼鉄の男」が負けるという衝撃の開幕である。
この世界では、かつて「希望の象徴」とされたスーパーマンは、ソーシャルメディア上で激しく批判され、宿敵レックス・ルーサーによって執拗に追い詰められている。今までのスーパーマン映画とは一線を画す、まったく新しい物語が今、幕を開けた。
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映画ファンが耳を疑ったジェームズ・ガンによるスーパーマンの再映画化
本作『スーパーマン』はDCコミックスを原作とする映画シリーズ「DCユニバース」の新たな幕開けを飾るもので、新生シリーズの1作目に当たる。2013年に始動した「DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)」は2022年にシリーズ再始動を迎え、その指揮を取る新スタジオの共同会長兼CEOに任命されたのが、本作の監督・脚本を務めるジェームズ・ガンだ。彼の異例ともいえる出世、そしてジェームズ・ガンがスーパーマンを映画化すると知り、多くの映画ファンが耳を疑ったに違いない。というのも、ジェームズ・ガン監督はこれまでスーパーマン的な超人ヒーローをしばしば批評的に、あるいは批判的に描き続けてきた映画作家だからだ。

ジェームズ・ガンの映画人としてのキャリアは、大学在学中に『悪魔の毒々モンスター』で知られる超低予算映画の製作会社トロマ・エンターテインメントで映画制作を学んだ所から始まる。彼は同社で『ロミオとジュリエット』を悪趣味なエログロナンセンスとして改変した『トロメオ&ジュリエット』の共同監督・脚本を務め、その後、脚本家としてハリウッドで名を上げていった。マーベル・コミックを原作とする映画シリーズ『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』において、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』3部作の大成功は記憶に新しい。