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Tortoiseのケミストリーが約30年もの間、途絶えない理由
─『Standards』は今から24年前の作品ですが、この音楽がここまで長く愛されるとは想像していましたか?
ジョン:もちろん、そんなことはまったく考えてないよ。ただ僕らは最初のアルバムを作っていたときからずっと、本当に音楽にエキサイティングしていた。Tortoiseのみんなと一緒に音を出せることがすごくフレッシュで、それまで僕らがやってきたどんな音楽ともまったく違っていて。「これはすごく特別だな」って感じていた。だからこそというか、こうして長く聴かれ続けていることに驚きはないし、自然なことのようにも思えるな。
蓮沼:そもそも、バンドのみなさんは曲を覚えているんですか? 事前のリハーサルは1回だけだったと聞きました。
ジョン:何度も何度も演奏してきて、もう身体に染みついてるからね。やっぱり僕らにとっては、化学反応のような関係性を持つメンバーが集まったグループだったのが一番大きかったと思う。もし他の誰かがいたら、その化学反応は全然違うものになっていただろうね。
蓮沼:そうですよね。人が変わったら違うものになる、というのは自分のプロジェクトにおいても共感します。昨日のライブを観ても思うし、曲によって各々の楽器編成を変えていくこと自体も音楽的に見えました。

ジョン:フレッシュな音楽を求めていたとはいえ、それでも僕らなりの「目印」みたいなものはたくさんあった。例えば、1970年代初頭のマイルス・デイヴィスは僕らにとってすごく大きな存在で。
あとはブライアン・イーノとデヴィッド・バーンが一緒に作った『My Life in the Bush of Ghosts』を初めて聴いたとき、「あ、こんなことしてもいいんだ」って思わされたし、This Heatもそう。そういう音楽が僕にとっては最高峰のひとつで、他にもポストパンクとか電子音楽、ダブ、いろんな音楽をとにかく吸収した。
─そして今ではTortoiseのサウンドは、蓮沼さんのような後輩たちの新たな目印になったわけですよね。
ジョン:そうかもね、ありがとう。10月にリリース予定の新しいアルバムには、完全に即興で録音されたトラックが1曲だけ入ってる。ほんの少し編集しただけで、あとは全部インプロビゼーション(即興)。
蓮沼:新作の制作はどうでしたか?
ジョン:正直フラストレーションもあった。パンデミックもあったし、今とにかく僕らは何をするにも時間がかかるようになったからね。でも素晴らしいものになったよ、満足している。
蓮沼:それぞれの活動もありますし、生活の拠点もバラバラだと時間がかかりますよね。だからこそ楽しみです。