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感情を揺さぶることは、生きる原動力になる
―今までの話の上で、新曲の“キスをしようよ”にはどんなモードが表れているとご自身では感じますか?
こーしくん:“君が生きる理由”は「すげえいい景色を見れば、ちょっとは気持ちが晴れるかもよ」という曲だったけど、今回は「ワクワクしたいな」と思って。で、ワクワクするものといえば……恋! そんな曲ですね。“君が生きる理由”は最後の施術みたいな感じの曲ですけど、“キスをしようよ”は、日々少しずつ摂取することで生きる活力が湧く健康食品みたいなイメージです。綺麗なものを見て感動するのも、楽しいことを考えてワクワクするのも、感情を揺さぶるという面では生きる原動力になるものだし。もっと言うと怒りも生きる原動力のひとつだと思うんですけどね。
―そう考えると、こーしくんは生きる原動力をずっと音楽に託していますよね。
こーしくん:うろ覚えなんですけど、僕の好きなポール・ウェラー先生が「どうやって生きるかを曲にしろ」みたいなことを言っていたのを高校生の頃に読んで、「かっけえ!」と思ったんです。
―“キスをしようよ”のサビでは<気付けばいつもポップミュージック>と歌われていますけど、この曲で「ポップミュージック」という言葉に重ねた想いやイメージって、どのようなものだと思いますか?
こーしくん:ポップミュージックはワクワクするものの象徴ですね。「恋」とニアリーイコールなものとして書いています。<気付けばいつも>っていうのは、「ワクワクするものって、その辺にあるよね?」と言いたくて。落ち込んでいる人って、視野が狭くなっちゃうものじゃないですか。でも「そんなことないよ。その辺に素敵なポップミュージックがあるじゃないか」と教えたかった。

―もうひとつ、この曲の歌詞で<散々見下してきた時代も / 哲学じみた憂いも / コインロッカーに / 預けたまま古くなった>というラインがありますけど、この部分はどんな思いがありましたか?
こーしくん:「捻くれたやつも、偏屈なやつも、恋しようぜ!」って感じですね。捻くれて偏屈なやつは、死んじゃいますから。
アキラ:こーしさんって、まったく冷笑的な感じがないですよね。今は冷笑的なムードが世間に蔓延していると思うけど、この部分の歌詞は、そういうムードに対して言っているのかなって。
山岸:裏を返すと、(こーしくんは)そういう面を知っている人なんだろうなと思う。ニヒリズムって誰しも持っているものだと思うし、それを分かったうえで、こういう曲が生まれるんだろうなって。
こーしくん:根底は自分も暗い人間だと思う。でも、根暗も宝物だから。根暗な部分がないと、悲しい人の気持ちをわかれないし、優しくなれないから。
―周りを見れば戦争が起こっていたり、個人のレベルで見ても、自分が明日、急に外に出れなくなることだって全然あり得ることで。そういう現実の残酷さとか冷たさのようなものを、こーしくんは知っていて、そこに抗おうとしている。少年キッズボウイの曲を聴くと、そんな感じがします。
アキラ:私はそこが好きです。歌詞が染みて、泣きそうになる時がある。