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「トライアンドエラー」は、失敗ではなく成功のための助走。無駄なことは一つもなかった。
ー2004年には養成所在学中ながら『M-1グランプリ』の準決勝に進出します。
藤森:あっちゃんが「養成所は教わる場所じゃなくて、1年を通したオーディション会場だ」と言って、入学する前に100本ネタを書いてきたんです。正統派の漫才をそれだけ練習して入ったんで、それなりに自信はあったんですけど、養成所の先生方のお眼鏡に全くかなわないんですよ。来る日も来る日も新しいネタを試すんですけど、全然褒められなくて、あっちゃんも心が折れかけて。

藤森:僕が「どうせ何やってもダメなんだから、怒られる覚悟でこれをやってみよう」と、100本の中でも一番変なネタを提案したんです。あっちゃんはやりたくなさそうだったんですけど、もう破れかぶれで披露して。そしたら先生がはじめて僕らの目を見て「可能性を感じる」と言ってくれたんです。そこからブラッシュアップして「武勇伝」が出来上がって、それで『M-1』も勝ち上がれました。その間、僕は何もしてないんですけど(笑)。
ーコンビ結成のときもそうですが、中田さんは綿密なリサーチと分析をするがゆえに、壁に直面することも事前に察知して足踏みしてしまうところがあったのかもしれないですね。
藤森:そうですね。真面目すぎるから、一度エラーが出てしまうとパニクってしまう部分があったのかもしれないです。
ーそこで藤森さんが「やってみればいいじゃん!」と鼓舞するという。
藤森:なんの危機感もない軽いノリのやつがいるっていうね(笑)。ちょうどいいバランスだったのかもしれないです。でも、やっぱりネタを100本作った相方がすごいんですよ。褒められなかったネタも失敗ではなくて。相方は「トライアンドエラー」という言葉をよく使ってましたけど、失敗じゃなくて成功のための助走なんです。無駄なことは一つもなかった。
ーなんでもすぐに調べられる今の世の中、この先の人生がどうなるかわかった気がして、逆に歩き出せなくなってしまうこともありそうです。そういうときに、藤森さんの「いいじゃん!」という姿勢は重要ですよね。
藤森:そういうノリって、若くないとできないことだと思うんです。家庭を持ったり年齢を重ねると、新しい分野に挑戦するのもどんどん難しくなっていくので。若いときはなんでもできたなと思うから、羨ましいです。
芸人になる前も、いろんなことに手を出しては引っ込めたりしましたけど、それもこの道に辿り着くためのプロセスだったと思います。もし将来が見え過ぎちゃうんだったら、起業してみたらいいと思いますね。僕らもベンチャーみたいなものだし、最近自分で会社やってる同世代と集まることが多いんですけど、やっぱりすごく面白い。キャバクラのボーイをやってた人が年商何百億の会社をやっていたり、キャリアもそれぞれで。やってみた先に何が待っているかは、誰にも予測できないですからね。一度の失敗を恐れすぎて慎重になるのは、選択肢を狭めてしまうことでもあるので。
