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孤独な人々のささやかな幸せと唐突な不幸の連なり

それぞれの背景を抱えて孤独に生きてきた人々が、何らかの拠りどころを見つける。もしくは、誰かと心を通わせる。その先に一縷の希望を見出したかと思いきや、ある日突然、それぞれの人生に残酷な「災い」が降りかかる。中村アン、松田龍平、じろう(シソンヌ)、中島セナ、内田慈、藤原季節、宮近海斗、竹原ピストルといった演者の表現の素晴らしさも相まって、各話が異なる映画として成立するのではないかと思わせるほど重厚な本作において繰り返し描かれるのは、彼女ら彼らが見出したささやかな幸せと、その先の不幸の連なりだ。
例えば、第1話の主人公・祐里が香川照之演じる塾の先生が運転する車の助手席から見上げた夜空に浮かんでいたのだろう、現実味を帯びてきた建築士という進路への希望。片や飲酒運転の末に人を死なせる事故を起こして断酒中の倉本のアルコールへの欲望が徐々に増幅していく様を描いた第2話の本当の悲劇は、別居中の妻・加奈(佐藤みゆき)の死自体よりも、彼にとっての「妻に会う」という希望が断たれることだった。さらに、ショッピングモールの清掃員として働く崎山伊織(内田慈)のリアルな日常の積み重ねが、理容師・皆川との間に芽生えた恋という希望をより美しく残酷に輝かせた第3話。周囲からは犬猿の仲で正反対の性格と思われている岸兄弟(じろう、奥野瑛太)の奇妙な符合を描いた第4話は、やはり別れた妻からの連絡に希望を見出した直後に文也(じろう)の死が描かれる。

それらはどれも、特別な誰かの物語ではなく、もがきながら生きる市井の人々の普遍的な日常の中に存在する、華やいだ瞬間を切り取ったかのようだった。遺された人々は、前述した嘉人のように「災難によって家族を失ったと考えればいい」と思うしかない。第4話で文也が妻に去られた時を踏まえて言うように「たとえ自分に非がなかったとしても、そんなの関係なく災いっていうのは降りかかってくる」し、同じく第4話で飯田(竹原ピストル)が自らの母の死を踏まえて「なんの理由もなく人が死ぬことはあるからな」と言う通り、散歩中の交通事故死など、当人からすれば理由などなく、防ぎようのない悲劇はこの世に数多存在するのだから。