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サブリナ・カーペンター『Mans Best Friend』 レビュー ポップフェミニズムの新たな形

2025.9.16

#MUSIC

エンターテイナーで在り続けることを選んだサブリナ・カーペンター

今作の公開にあたって最も致命的だったのは、カバーアートだろう。女性を従属的な構図に置き、これまでの女性史を退行させる絵だと作品リリース前に大きな物議を醸していた。本人は、「批判は想定外だった。みんなもっと外に出た方がいい」と発言し、表現の自由を主張している。また、これを機に異なる捉え方を知れて良かったとも言っている。ディズニーでの長年の経験があってかメディアトレーニングがしっかりしているのは明らかで、このコメントは一定数の人々には説得力もあるだろう。その失敗を払拭しようとする動きにも見えた先日のMTVビデオミュージックアワードでは、“Protect the Dolls”(トランスジェンダーの人を支援するスローガン)のムーブメントを表明したプラカードを用い、ドラァグカルチャーをふんだんに取り入れていた。そしてカーペンターをLGBTQ+の味方の像として映し出した演出、さらにはブリトニー・スピアーズへのオマージュも含め、ソーシャルメディアで絶賛を呼んだ。

注意したいのは、これら2つの演出に対する世論の反応はとても対極的で、この明白な高低差はPRチームの思惑通りとも言える。カーペンターがどれだけ小気味の効いた発想で今回のカバーアートを思い描いていたとしても、男性への風刺批判という本来の彼女の意図が霞んでしまうことは制作側も承知の上だったと、リスナーが思うのは不自然なことではない。一過性の話題作りに対してシビアな受け手も少なくない今、かの有名なマリリン・モンローの写真が生んだような瞬間を再現しようとしていたのなら、安易すぎたのかもしれない。演じる本人が生きている時代が違うのだから。

一気にスター街道を突き進んだサブリナ・カーペンターは、瞬く間に「ホットトピック」が更新される現代で、多くの批判を受けながらも、エンターテイナーで在り続けることを選んだ。少なくとも、『Man’s Best Friend』(「人類の最高の友」)は、自己憐憫に溺れるのではなく、ショーを止めないというポップスターとしての覚悟を、鮮やかに示している。

『Man’s Best Friend』

8月29日(金)リリース

▽トラックリスト
1. Manchild | マンチャイルド
2. Tears | ティアーズ
3. My Man on Willpower | マイ・マン・オン・ウィルパワー
4. Sugar Talking | シュガー・トーキング
5. We Almost Broke Up Again Last Night | ウィ・オールモスト・ブローク・アップ・アゲイン・ラスト・ナイト
6. Nobody’s Son | ノーバディーズ・サン
7. Never Getting Laid | ネヴァー・ゲッティング・レイド
8. When Did You Get Hot? | ホエン・ディド・ユー・ゲット・ホット?
9. Go Go Juice | ゴー・ゴー・ジュース
10. Don’t Worry I’ll Make You Worry | ドント・ウォーリー・アイル・メイク・ユー・ウォーリー
11. House Tour | ハウス・ツアー
12. Goodbye | グッバイ

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