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馬への不器用な情熱を丁寧に表現する目黒蓮

本作の後半を語る上で欠かせないのが、耕造の隠し子・耕一を演じる目黒蓮だ。
登場したときの耕一は、耕造に対して意固地になっていたが、馬が絡むと話は別だ。ロイヤルホープの次の世代の所有についての話を契機に、耕造と親子として向き合うことができた。親子のわだかまりよりも、馬のより良い未来を考えることの方が、耕一にとっては重要だったのだろう。
いつも顔をを落として話していた耕一であったが、話が馬のことなるとスッと前を見据える。その視線の熱さには、耕造の馬への情熱と近いものが感じられた。
耕一が耕造に提示した相続馬限定馬主を引き継ぐ条件は、ロイヤルホープの子どもを引き継ぐこと。耕一は栗須に、ロイヤルハピネス産駒(さんく)の馬であれば、相続したいと告げる。ロイヤルハピネスは、耕一の母・中条美紀子(中嶋朋子)が耕造のために選んだ馬だった。馬の話になると早口で相手をねじ伏せるように語る姿には、美紀子の論理的な相馬眼(そうまがん)を感じさせる。目黒の一つひとつの芝居が、この物語における継承を強く印象づけるのだ。
目黒といえば、ドラマ『silent』や『海のはじまり』などでの、複雑な葛藤の繊細な表現が印象的な俳優だが、耕一役はそうした役柄とは一線を画し、意思が強すぎて空回りする未熟なキャラクターに見える。そうした耕一の大きすぎてコントロールできない馬への不器用な情熱を、目黒は視線の向け方や表情のこわばりで丁寧に表現している。
そんな目黒の表情からも伺える耕造に似た頑固さ。この頑固さゆえに、耕一が耕造とは異なる形でロイヤルファミリーを支えてきたチームの面々とぶつかり合っていくことも、物語後半の見どころとなった。