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宇佐美と仁科の「俺たちは天使だ」に込められたもの

仁科に関するエピソードの中で、もう一つ印象的な場面があった。恵理を救助ヘリに送り出す直前、「おじちゃんはひとりで大丈夫?」という小さな問いかけに、仁科は「当たり前だ! 俺たちは天使だぜ!」と力強く答えるのだ。この「天使」という言葉は、宇佐美もたびたび口にしている。そもそも、初登場時の宇佐美は「俺たちは天使だー!」と叫びながら、ヘリコプターで颯爽と空から舞い降りていた。
この「俺たちは天使だ」という言葉は、自分たち救難員が「神」ではないことを意図しているのではないだろうか。全知全能の神ではない以上、すべての命を救えるとは限らない。助けられるのが「人」ならば、助けるのも「人」。救難員たちにとっても、死は常に隣り合わせだ。だからこそ、宇佐美も仁科も自らのことを「天使」と呼ぶ。それは、どんなに絶望的な状況でも、人命救助最後の砦として、人と神の間の存在として、一筋の光でありたいという宇佐美と仁科の強い願いが込められていた気がしてならない。