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【2025年上半期振り返り・音楽編】若手ライター3人が国内外の注目作を語る座談会

2025.7.3

#MUSIC

まだまだある、上半期の良作

—最後に、ここまでで挙げそびれたタイトルやアーティストがもしあれば、おひとり1つずつ教えてください。

キムラ:HAIM『I quit』は、アメリカーナやブルース、近年アメリカのポップシーンにみられる保守回帰みたいな側面もある一方で、ローファイやドリームポップ等いまの若い世代に積極的に聴かれている音楽ともしっかり共振していて、すごくバランスがいいと思いました。ジャンルがジャンルとして、特定の場所に留まり続けるプライドも、他のジャンルと接続する柔軟さも、どちらの大切さも説いている。且つ、脱恋愛宣言・シングルガール宣言といった、彼女たち自身の個人的なテーマやメッセージも込められていて。

風間:なるほど。

キムラ:シーンやジャンルの現状とこれからの展望、加えてアーティストの個人史も込められている、彼女たちのここ10年間のキャリアの総括的な作品ですよね。こういう、この10年を総括して次の10年に備えるような作品が、下半期にはもっと出てきそうだし、今年の年間ベストにはきっとそういう作品が上がってくるんじゃないかなと思っています。

風間:トラック単位で言えば、クリステル(Chrystel)という人がリリースした“Bisous”という曲が好きでした。コートジボワールにルーツがあるアーティストなんですけど、コートジボワールのクーペデカレというダンスミュージックをベースに、それを削ぎ落としてミニマムなR&Bにしていて、めちゃくちゃかっこいい。ローカルのリズムを生かしつつ、アッパーなものをクールダウンして輪郭だけある状態にするのは、南アフリカのタイラ(Tyla)がやったのと同じ手法ですよね。この手法は、いろんな国のリズムでやる人が増えていってもいいんじゃないか、増えそうだな、と思いました。

松島:僕は、Elle TeresaのEP(『YUKAKO』)についての言及をすっかり忘れてたんですけど、あれは今年上半期だとかなり良かったですね。

キムラ:うんうん。

松島:ビートが、古いエレクトロとか、1980年代〜90年代に流行したマイアミベースとかゲットーテックみたいなところで統一されていたのが印象的でした。そのあたりのバウンシーなトラックは最近クラブでも結構かかるんですけど、そういう流れも汲み取っているし、彼女のキャラクターやアーティスト性に対してばっちり合うビートが、トラップじゃなくてそっちなんだ、というのがしっかり提示されていて。『POP YOURS』でも観ましたが、素晴らしかったですね。会場が一番盛り上がってたのは多分Elle Teresaだったんじゃないかなというぐらいでした。

風間:たしかに。僕の周りでもかなり話題でした。リリックも、なんだか毎週のように何かしらElle Teresaの歌詞のスクショがSNSでバズるのを見ている気がしますね。

松島:女性人気もすごいですし、将来的には受容のされ方が浜崎あゆみとかのレベルまで行くアーティストだと思います(笑)。

キムラ:去年ですけど、柴田聡子とクロスオーバーしたのも面白かったですよね(11月にWWWでツーマンライブが開催された)。

松島:そう! チケット外れて行けなかったんですよ。あれは本当に企画者の方に賛辞を送りたいですね。

風間:あれは本当に名企画でしたよね。この3人が全員聴いてて、全員好きだった作品はひとつも挙がらないかと思ってましたけど、Elle Teresaがそうでしたか!

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