INDEX
垣根を超えたメイ・シモネス、貫いている野口文
風間:自分が聴いているものの中で、上半期で一番その垣根というか、「この辺の人たちはこれを聴いてるけどこれは聴いてない」というトライブを超えてきたなと思うのが、メイ・シモネス(Mei Semones)です。
松島:はい、はい。
風間:ブルックリンにいる24歳のシンガーソングライターで、5月に『Animaru』というアルバムが出たんですけど、僕の周りでもトライブを飛び出して支持されている感じがあります。ボサノバの弾き語りで知られた人なんですけど、インディーロックの人たちと一緒にずっとツアーをしてたりして。
—来年、Men I Trustのサポートとして来日することも発表されましたね。
風間:お母さんが日本人で、日本語と英語で歌ってるんです。自分でも自分の音楽をJ-POPと言っていて。
キムラ:星野源もラジオで紹介してましたよね。
風間:その影響ですごく認知が広がった感じもありますね。あと、反対にインプットがすごく狭くて、「これしか聴いてません」みたいな人の存在にも、それはそれでテンションが上がるところがあって。びっくりしたのは、2月に『藤子』というアルバムを出した野口文がインタビューで「ジョン・コルトレーンの『A Love Supreme』とストラヴィンスキーだけ聴いてます」みたいなことを言っていて、めちゃくちゃかっこいいなと思ったんです。
松島:貫いてますねえ。
風間:ジャズの要素と宅録の要素がある作品なんですけど、それをやるなら意識してしまいそうな、例えば長谷川白紙や、Suchmosフォロワー的なバンドを本当に聴いてきてなさそうなんです。時代性がないっていうか。たしかスマホも持ってないと聞きました。
キムラ:野口文からは若干の石橋英子っぽさを感じました。日本でああいうコンテンポラリーなジャズっぽい感じに特化していくアーティストって少ないですよね。もう少しマキシマムに、または極めて実験的なサウンドアプローチへと変容していくケースが多いと思うんですけど、野口文はソリッドだしシンプル。職人的とも思います。
風間:まさに8月に、野口文さんの自主企画で、石橋さんと2マンライブをやりますよね。