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オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの接続
風間:5月に出た川島明のアルバム(『アメノヒ』)にも、同じことを感じました。『ラヴィット!』のネタとか入れたらぜったい喜ばれるのに、入れてこないのがすごい。藤井隆プロデュースで、She Her Her HersやLe Makeupが楽曲提供してるんですけど。
松島:Le Makeupさんがそこに参加しているのにはびっくりしたんですけど、広く受け入れられるべきアーティストではありますよね。
風間:たしかにLe Makeupの起用が一番びっくりしました。曲もアレンジもかなりそのままLe Makeupで。
松島:今年の上半期は、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの垣根がなくなって、少しずつ接続されてきている感覚もありましたね。インディペンデント性を保ちながらメインストリームな表現もできるし、インディの中にも決して内輪や自己完結的ではないソングライティングができる人もいるのが、ようやく伝わり始めてるのかな、と。
—Peterparker69と野田洋次郎のコラボレーション(“Hey phone”)もありましたし。
松島:そうですね。Peterparker69は「普遍的なポップスを目指してるんだけど、自分たちがいいと思うことをやろうとすると、どうしても変則的な形になっちゃう」ということ前々から言っていて。売れるためにそこをオミットしていくのか、そのままでいくのか、という問いがあると思うんですけど、あのリリースでは「そのままでもどこまでも上を目指せるぞ」というのを、提示しようとしているんじゃないかなって思いましたね。
キムラ:その話で言うと、ニーナジラーチ(Ninajirachi)というDJ / プロデューサーが、櫻坂46のリミックス企画に参加したんですよね( 『Addiction』収録の“承認欲求 -Ninajirachi Remix-”)。『ロラパルーザ』や『EDC』などの大型フェスにも出演している人なので、そこまでアンダーグラウンドでもないんですけど……とはいえ日本ではまだそこまで知られていない新進気鋭のプロデューサーを櫻坂46と接続する仕掛けは、メインストリーム側の動きとして面白いと思いました。
松島:架け橋的な動きでいうと、LDHのガールズグループF5veとかもそうですよね。
キムラ:はい。プロデューサーや客演にケシャ(Kesha)とかA.G.クックを起用してますよね。
松島:caroline『caroline 2』はどうでした? Rolling Stone Japanのインタビューを読んだらダリアコア(=2020年以降に流行しているサンプリング音楽の1ジャンル)の話が出てきて、そういうところから影響を受けてああいう音楽を作っているのは面白いなと思って。
風間:確かにそうですね。
松島:バンド的なフォームにこだわる人もそういうところから影響を受けるし、逆に、ダリアコアの提唱者でもあるジェーン・リムーバー(Jane Remover)なんかはインディーロックから強い影響を受けている。やっぱりいろんなところの境界線が曖昧になっている感じはしますよね。
風間:そういった、ジャンルや人脈をまたぐ存在がいると、両方を聴く人が増えるし、良いですよね。国内だとCwondoさんがそういう存在ですよね。いろんなところで活躍していて。(Cwondoがギター / ボーカルを努める)No Busesの今年のアルバム(『NB2』)もちゃんとそこをつなぐような内容でした。
松島:ああ、すごいですよね。リスペクトしてます。Cwondoさんは実際、小さなクラブでもよく会いますからね。ここにもいる! みたいな(笑)。Cwondoさんと近いところで活動してるvqというアーティストがいて、最近teleにリミックスを提供したりしているんですけど(配信EP『「硝子の線』に収録)、彼もCwondoさんと感応して変わっていっているように見えます。
風間:確かにそういう感じがします。