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映画『マインクラフト』が拍車をかける。 ゲーム原作映画はハリウッドの新定番へ

2025.4.25

#MOVIE

近年、アメコミ原作映画が席巻してきたハリウッドで、それに迫らんとする勢いでゲーム原作映画が台頭してきている。日本に先駆けて世界的大ヒットとなっている『マインクラフト/ザ・ムービー』は、言語や世代、文化を超えて広がるゲーム原作映画の力を証明しつつある。日本でも『8番出口』など、次々に控えるゲーム原作映画だが、その潮流は今後どこへ向かうのか。映画評論家の小野寺系が解説する。

アメコミからゲームへ。転換期を迎えるエンタメの潮流

エンターテインメントをグローバルに牽引してきた、アメリカの大作映画。ここ10数年間でその主流となってきたのは、アメリカンコミック・ヒーローのユニバース化シリーズだといえる。そんな潮流が近年、変化のときを迎えようとしている。日本でも公開が始まった、世界的な人気ゲームを原作とした映画『マインクラフト/ザ・ムービー』の大ヒットは、そんな転換の潮流に拍車をかける1作となりそうだ。

プレイヤーが世界の姿を変えていけるサンドボックス型オープンワールドゲーム『マインクラフト』は、世界売上3億本を突破し、「世界で最も売れたゲーム作品」としてギネス世界記録に認定されたメガヒットゲームだ。その初の映画版となった『マインクラフト/ザ・ムービー』は、若年層やファミリー層を中心に、強い訴求力を発揮。ジャック・ブラック、ジェイソン・モモア、エマ・マイヤーズなどの人気俳優の出演や、若者を中心としたSNSなどでのバイラル効果もあって、わずか2週間で約7億ドルの興行収入を獲得。先に大ヒットを果たした『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)とともに、大きな記録を積み上げている。

言語や世代を超えて広がるゲーム原作映画の可能性

『マインクラフト/ザ・ムービー』の驚異的なスタートダッシュには、さまざまな理由がある。その一つが、CGなど技術革新によって、ゲームの世界を魅力的に映像化できるようになったこと。そして、新たな世代へのアピールだ。Netflixをはじめとする配信事業やYouTubeなどの動画配信によって、従来の映画産業や映画館が厳しい状況にあるなか、『マインクラフト』のような大ヒットゲームを題材にしたことが、これまで映画館に足を運んでこなかった層の流入を実現したのだ。

2011年の発売以来、14年の歳月を経て初の実写化

それを象徴するのが、若者たちの劇場内での盛り上がりだ。劇中の「あるシーン」において、ゲームのユーザー同士に理解できる存在が登場したことで、そのシーン自体が、『天空の城ラピュタ』(1986年)のTV放映で「バルス」シーンがSNSでミーム(ネタ)化したように、イベントとしての意味を持ったのである。アメリカの一部劇場では、該当シーンで大きな歓声をあげたり、ポップコーンを投げるなどのマナー違反も横行し、出演者のジャック・ブラックが注意喚起するなどの事態に発展している。もちろん問題含みではあるが、それは新しい層を「掘り当てた」証拠でもある。日本でも、HIKAKIN、ドズル社のような、ゲーム実況をおこなうYouTuberを、日本語吹き替え版の声優に起用することで、若年層獲得を強化している。

ミーム化の標的となったニワトリ(中央上)

さらにゲーム作品は、「ノンバーバル(言語不要)」で楽しめる面があったり、地域性や固有の文化を限定しない特徴が挙げられ、国際市場での強みを持っている。中国をはじめとしたアジアで映画の消費が高まっている現状を考えると、ゲームを題材とした映画は、より大きなヒットを見込める宝の山だという見方もある。新しい年齢層だけでなく、地域性、文化を乗り越える面で、優秀なジャンルだといえるのだ。

加速し続けるゲームの実写化

すでに『ソニック』の映画シリーズや、ドラマシリーズ『THE LAST OF US』シリーズなどが話題を生み出し続けているだけでなく、今後も『ゴッド・オブ・ウォー』の実写ドラマ化や『DEATH STRANDING』『ゼルダの伝説』『Ghost of Tsushima』の実写映画化、『バイオハザード』リブート企画などなど、多くのゲーム原作映画、ドラマ作品が控えている状況。さらには先日、セガのレトロなドライブゲーム『アウトラン』がマイケル・ベイ監督、シドニー・スウィーニーの出演で映画化されることが発表され、意外な企画の成立が話題を呼んでもいる。今回の『マインクラフト/ザ・ムービー』の成功により、こういった流れは加速を続けることが予測される。

とはいえハリウッド大手映画会社が、すでにファン層を獲得しているアメコミヒーロー映画からゲーム原作映画に、ただちにシフトすることは考えにくい。当分の間は、ヒーロー作品とゲーム原作映画の両輪を駆動させながら、興行的なデータの推移を見守りつつ企画の可否を判断していくと考えられる。というのも、観客の動向が目まぐるしく移り変わり、ヒーロー作品も売り上げを落としているなかで、ゲーム原作映画がどこまで好調を維持できるのかも保証できないところがあるからだ。

自称「1989年の最強ゲーマー」のギャレット・ギャリソンを演じるのはDC映画『アクアマン』のジェイソン・モモア(右)

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